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2006/10/28

「安達原」

2日続けて三響會の感想でございます。
だってとっても感動したんですもん。

歌舞伎とお能の競演「安達原」は、鬼のお話です。
鬼とか妖のものとかを題材にした話はとても多く、美しい姫君も実は花の精だったり蛇や狐が化けたものだったりするもので、そういった話は古今を問わずとても魅力があります。
なぜ魅力があるかというと、それらのものたちは叶わぬ「悲しみ」を持っているからなのですよね。
たとえば、蛇だから恋しい人と結ばれないとか、鬼だから人目を避けて夜活動するとか。
人間にはない能力を持っているからこそかえって恐れられ、余計にそのせつなさが増幅されます。

この「安達原」(奥州の地名です)では、鬼となり人を喰って生きている(仮の身は)老婆が、そんな穢れた我が身のやるせなさをうらみながらも、ひっそりと人間らしく生きていこうとしている姿が映し出されます。
行者の旅人を貧しい庵に一晩泊めることになり、もてなしをしていたけれど、禁を破った人間が老婆の正体を身破ってしまう。
見破られたからには本来の鬼の姿になり、けれども行者の必死の念仏に押さえられてしまうという、鬼物語にはよくみられるストーリーです。

もともと歌舞伎には、能を下敷きにした演目が少なくないのですが、これもそのひとつ。流派によっては「黒塚」というタイトルでも演じられています。

…て解説はそのくらいにして。
歌舞伎で表現される「安達原」、能の「安達原」。
両者を続けて、比べて観ることができるなんて、それだけでもわくわくしていたのですが。。
恐らく歌舞伎のほうは少し古典的に、能のほうは多少柔らかく、演じられていたような感触を受けましたが、空気感がこれほどまで異なるものだとは驚きでした。
歌舞伎は、「芸能」といった感覚でエンタテイメント性が高いのです。
観客の立場からすると、すごいと思ったら素直に拍手してしまうし、見せ場ではかけ声をかけてしまう、そんな雰囲気があるのです。
舞台上で行われていることに、どんどんのめりこんでエネルギーが高まっていくといった感じです。
ところが能は、ぴっちりとはりつめた空間の中に、観客も引き込まれて昇華してゆく感じ。
どちらがいいとか悪いとかではなく、双方が双方の素晴らしさがあるのですが、性質は全く異なるものでした。
もちろんそうしたことは、事前の知識でもわかりきっていたことなのですが、こうして目の当たりにしてみると、身の毛がよだつほどものすごい「気」の違いがあるというか…。
まさに実感しましたね。

平たい表現ですが、じつに興味深かったです。
そして、こうした伝統芸能がお互いのジャンルを超えて、コラボレートしていくことも、とても意義のあることなのだと感じました。

ところで。
肝心の亀様のことをまだひとことも語ってないじゃないですかっ。ふふっ。
またあらためて、「亀語り」がっつりいきますよーん♪

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コメント

>みゅぅさん、ぜひぜひ観てくださいな♪ご主人さまと一緒に!歌舞伎座では毎月毎日のように上演しているし、巡業もあるので、ぜひ機会をみつけてくださいねー!
なにかが伝えられていたら…まだまだ力不足ですけど、とても嬉しいです。ありがとうございます。

こんにちわ。
歌舞伎・能など、日本の伝統芸は1度は見てみたいと思っています。が、なかなか重い腰が上がらず…。でも、mamiさんのブログを見ていると、本当に行きたくなります。すごく説明が上手だし、分かりやすいし、その場の雰囲気が分かりますし、mamiさんは何かを他者に伝える能力があると思います。私も見習わなくちゃと、毎日思います。日本の芸の話に戻りますが、せっかく日本人に生まれたんだから1度は見たいです。いつか、絶対実現します。

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