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2006/10/30

亀様@安達原

一日おいてまた「三響會」のことを。
能と歌舞伎でこの「安達原」を並べて観れたことがほんとうに有難くて興味深くて。
それぞれの役割とか違いとかをつぶさに観ることができたわけで、歌舞伎は少しは観ているものの、お能についてはまったくの初心者に近い私には、貴重な経験でした。
で、この試みにあっての亀治郎さんについてを書きたいと思います。

歌舞伎「安達原」を観るのは、私は今回が初めて。
なので、どういう演出がなされていたのか、「三響會」という場にあってどういった位置づけで構成を決められたのかはよくわからないのですが、パンフレットによると台本は昭和初期のもの、音楽は「詞章は能の同曲を用い、長唄と囃子を巧みに組み合わせている」とあります。
演目を観た印象でも、科白に「〜候」など古典的な言い回しが多くみられ、比較的本歌である能の構成に近かったのでは?という感じでした。

日頃、古典に自分なりの解釈をのせて自ら演出・構成し画期的な舞台をつくっている亀治郎さんですが、この演目においては、古典を大切に演じられている印象。
老婆のときのお声は、とても低く響くような感じで、お父様の段四郎さんにそっくり!
亀治郎さんの声質はいわゆる美声、というのではなくハスキーな中に色気があるのですが、まったく異なっていて。
つつましく暮らしながらも世を恨んでいるような老婆(=鬼)の心持ちが押し込められているようで、ちょっと驚きでした。
言い回しはどちらかというとお能に近い感じで、動きも少なくて地味な印象。
とても押さえた中に鬼気迫る演技でした。

ところが一転、鬼と化してからの演技(というか立ちまわり、踊りですが)は、次から次へと激しい動きをされて、そのひとつひとつが迫力があり、美しくもあり、いっときも目を離せないといった風情。
この激しい立ち回りは、亀治郎さんの得意とするところで、ほんとうに引き込まれました。
長袴の衣装でぐるぐると激しく回転したり、「仏倒れ」という直立の姿勢のまま倒れこんでいく動きや、最後には奈落へと飛び下りていったり。
前半が押さえたものだっただけに、なおいっそう際立ち、エキサイティングな舞台でした。

構成的に、緩急見せたかったのでしょう。それはとても成功してたと思います。
そして、後半の部分は、亀治郎さんの真骨頂だったと思うし。(おもだか屋さんの血筋かなぁ)
本当に、素晴らしくて!興奮してしまいましたもの。
が、前半の老婆については、科白の言い回しなど、もっと、もっと、素晴らしくできるのではないかなーと。
古典的な科白、抑揚のあまりない押さえた表現のなかにも、ぴぃんとはりつめた空気を、亀治郎さんならもっと出せるはず。
なんて、これはファンの欲目でしょうかねぇ?
十分に素晴らしかったので、わがままでよくばりなファンですみません…という感じですが…。
このあとのお能と見比べたせいもあるのかもしれませんが、お能には動きのない中での空気感、動きを観客に想像させる膨大な空間の拡張力といったものを感じたので、(能は能、歌舞伎は歌舞伎ではあるけれども)前半部分にはもう少しそんな空気感があったらさらに素晴らしかったなぁと思いました。
逆に、お能のほうには、先に歌舞伎を観てたからこそ、そういったものを感じられたのかもしれませんね。
お能だけ観てたら、私にはなんのことやら?だったかも。

「三響會」、私は初めての観賞で、いつもは歌舞伎と能がもっとコラボレーションしている構成でなさっているようなのですが、このたびの両者を並べてみることができる、この企画は私にとってとてもタイムリーで素晴らしいものでした。
亀治郎さんも、いろいろなジャンルの方とこうして交わって、ご自分の世界をますます拡げていかれるのかと思うと、ほんとうに楽しみ!(来年は大河に出演されて、映像世界の方と交わるわけですし)
舞台を見せていただくたびに、進化した素敵な亀治郎さんになられているのが嬉しくてたまりません!

余談ですけど、これで舞台での亀治郎さんはしばらく見納めと思うあまり、ワタクシかなりのめり込んで観ていたらしく(笑)お隣に座ってらした方に「亀治郎ファンですか?」って声をかけられてしまいました。はずかしー。
でも、その方も亀治郎さんファンだったので、ひとしきりお話が盛り上がって、とても楽しかったんですけど(^-^;
あーでもこれでしばらく舞台で拝見できないと思うと、ほんとに淋しいー。。
…そんなこんなで、囃子やお能に新たな発見もあり亀治郎さんのお姿も瞼に焼きつけて、たいへん満足な三響會なのでありました。
来年も、ぜひ観に行きたいと思います。
そして、いつの日か亀治郎さんの「黒塚」を観てみたいという気持ちが募ったのでございました。

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コメント

>みゅぅさん、いやー「三響會」はホント楽しかったです。でも、通じゃないんですよ、全然。。お恥ずかしいです。
いろいろな方と交流してお互いを高めてゆけたら、いいですよね。

こんにちわ。
歌舞伎も能も見たこと無い私にも、mamiさんの想いが伝わってきました。楽しかったんですね。でも、見方がもうツウだから、びっくりです。ツウのmamiさんの感想を読んでるだけなのに、私もツウになったような感覚に陥りました。
本当にいろんな世界の人と交わるのは良いことですよね。私も、こうやってブログでいろんな人の意見や思いを少しでも垣間見ることで、成長してる感じがします。本当なら、顔をあわせて交流するのが1番良いことなんでしょうが、顔が見えないからこそって言うのもありますよね。私もどんどん世界を広げていきたいです。

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