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2006/11/09

「伽羅先代萩」

はい。
お父さんチームによるオトナの歌舞伎でございます。
もともと「顔見世」というのは、以後一年間に出演する役者が勢ぞろいしてご挨拶をするという、とっても豪華な顔ぶれの舞台だったのですね。
毎年11月がこれにあたり、お正月に勝るとも劣らない華やかさだったようです。
今は少し性質が変わってきたようですが、今月の歌舞伎座は、團十郎さん、菊五郎さん、段四郎さん、仁左衛門さん、芝翫さんと、大物がそろい踏み。
まさに「豪華」な舞台となりました。

昼の部のみどころは、なんといっても「伽羅先代萩」を通しで観れること。
歌舞伎の演目は長いので、ひとつの演目のうちのいちばんの盛り上がりどころを抜粋して演じられることが多いのですが(おいしいとこどり、ってやつですかね)
それはそれで楽しめるんですが、どうしても「なぜそんなに泣けるのか、感動するのか」いまひとつよくわからなかったりするんですよね。
でも、今日は(飯炊きのシーンはなかったけど)ほぼ全編やってくれたので、クライマックスの盛り上がりがよくわかりました。

乳母政岡がわが子が殺されても気丈に若様を守り、人気がなくなってから初めてわが子を抱きしめ大啼きするシーンは、抜粋版でもよく演じられるみどころのシーンですが、今回はそれまでの流れがよくわかるだけに、ぐっとくるものがありました。
政岡の菊五郎さんは、ほんとうに見事な演技で引き込まれました。
そのシーンで着ていた着物の赤い色が美しくて、悲しくて。
政岡の打ち掛けは黒地に竹の柄で、豪華ながら渋い気品のものなのですが、それが一転、赤になることで(打ち掛けの裏地が赤、そしてこのとき打ち掛けの下に着ている着物が赤)「生身の母としての」政岡が表現され、赤い色が母の情愛や生命力や血のつながりや激情や、いろいろな感情を宿らせているようで、瞼に焼きつけられました。
菊五郎さん、うまいなぁ、と唸ってしまいました。

いっぽう政岡の敵役、八汐を演ったのが仁左衛門さん。
これがまた、小憎らしくて意地悪でねぇ。まさに「悪役」ですよ。
で、なんともいえない間が、笑わせてくれるんですよ。
うまいっ!とこれまた拳をにぎってしまいます。

大団円、対決の場の團十郎さん、段四郎さんもものすごい動きでハラドキドキ。
段四郎さんのメークが、ものすごい老けメークで、いまにもよろよろ倒れそうだし、(亀治郎さんのお父さんだし)がんばれっ!と(話はわかってるのに)つい応援(?)しちゃう迫真の演技でした。
最後の舞いも、とても心に沁みました。
段四郎さんは、「安達原」の強力の役も良かったし、なんともいえない味わいと重みのある素敵な役者さんです。
團十郎さんも、お元気になられてよかった〜!やっぱり、見得の切り方の格好よさは天下一品です。

たいへん見応えのある「伽羅先代萩」、大物の役者さん揃いでとても落ち着いて見られたし、さすがに重み深みのある舞台でした。
今月は息子さんチームの演舞場「花形歌舞伎」と見比べるのも面白そうですね。
「顔見世」ほかの演目についてはあらためて。

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コメント

>みゅぅさん、観て来たような錯覚とは、、いえいえそんな技量は私にはありませんが(;^-^A、でもとっても嬉しいです。
歌舞伎の役者さんのみならず、ベテランの方というのは積み重ねてきた重み味わいがありますよね。たとえワンシーンしか登場しなくても、記憶に残ってしまいます。ニクイですね。

こんにちわ。
ベテランさんの演技や芸は、引き込まれますね。私は歌舞伎を観たことが無いので、ドラマや映画の話になってしまいますが、ベテランさんの演技は好きです。歌舞伎役者さんがドラマに出たりしますが、またそれも良いですよね。基礎がしっかりしてると、いろんなことが出来るんでしょうね。
それにしても、mamiさんは文章が上手ですね。またまた私まで同じものを観てきたような錯覚に陥りました。mamiさんと同じ空間にいたような…。

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