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2007/03/29

「いとしの儚」

劇団遊座・旗揚公演「いとしの儚」@新国立劇場小劇場、を観てきました。
これは数年前、扉座の横内謙介さんが書かれた作品で、初演は扉座、その後井川遥さんの主演で再演され、今回は再々演ということになります。
横山智佐さんが儚を、山中崇史さんが鈴次郎、そして演出は扉座の茅野イサムさんがなさいました。(山中さんは初演のときも鈴次郎を演じられてます)

鈴次郎は愛を知らずに育ってしまったとんでもないならず者で、博打で生計をたてています。
あるとき鬼との博打に勝って絶世の美女=儚を手に入れますが、儚は死体を繋ぎあわせ、赤子の魂を入れたというつぎはぎのシロモノ、魂と肉体が完全にくっつく100日目までにもしも契ってしまったら、その体は水となって消えてしまうという運命を背負っている。
このモチーフは、古典「長谷雄卿草子」を下敷きにしていると思われますが、こうした「条件を課せられ」、その「禁忌を破り」「すべてを水泡に帰してしまう」というパターンは、どういう意味を持つのでしょう?
また、そこに切なさ儚さを感じて共鳴してしまうというのはいったいどういうことかと思うのです。

愛されない切なさ卑屈さを、乗り越えようとして乗り越えられない、人間の弱さ悲しさを訴えたいのか。
そんな自分のことをいつまでも愛してくれる、無上の存在を、都合良く作って夢みたいのか。
一生懸命やったけど、間違えてしまいました、もう取り返しがつきません、といって生きていくことを悲しいことだと容認したいのか。
そういったことを、最後に儚が水とならず花となった(このシーンはほんとうに美しいし、鬼の語りがひたすら悲しい!)ことで「美しい愛の物語」みたいに消化されちゃったことが、私としては未消化でした。
それなのに、ちょっと泣けちゃった自分にさらに、未消化な気分がつのりました。

鈴次郎は、愛を学んだのか。もしくは、もともと自分の奥深くに眠っていた愛を、掘り起こすことができたのか。
愛する気持ちを蘇らせたけど、儚は花になって天に舞い、自分は鬼になって、自らの悲しい物語を語りだす。
ぎりぎりのところで現実化できなかったということですよね。
それでもね、魂は進化できたんだと思うのですが、そして私たち自身の魂の進化も、そういうステップを踏むことがあることが確かににあるのですが、、、せつないなあ。

共鳴できるところがある、でもその「共鳴」の理由はなんなのか、そこに共鳴しちゃってどうなのよ、みたいなところがどうしてもぬぐえなくて、
たくさんの問題提起をしてくれて、
それを「未消化」と感じたのは多分、自分自身がまだまだ進化と浄化の途中だからで。
きっと私自身が「未消化」な自分であるのでしょう。
そんなことを感じさせてくれた
「また観たい」と思わせてくれる、そんな作品でした。

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コメント

>みゅぅさん、そういう教訓のお話もあると思いますよ。でもこのお芝居は違った、ということで。

今まで、そんなに真剣に考えたこと無かったです。
おとぎ話でも結構条件を守れず、泡と消えてしまうお話ありますよね。
私は、ただ単に、「約束事は守りましょう」だと思ってました。
浅はかですね。お恥ずかしいです。

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