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2008/03/21

ヤマトタケル

3月19日@新橋演舞場、右近版。

スーパー歌舞伎というものを、初めて観ました。
22年前のこの作品の初演から、この作品がどれほど愛され、評価を得、これは歌舞伎なのかそうでないのか、なにが歌舞伎なのかーという論評が語りつがれ語り尽くされてきていると思うので(観たことのない私でも、その文章のひとつやふたつは読んでいる)そのあたりを語るのは今さら野暮というもの。
そんなことより、物語として、とても感動しました。
感想は、以下にたたみます。

200803192059000
演舞場前のポスター。
舞台を観たあとに見ると、これだけですごく感情移入しちゃいます。

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本日のキャスト。
ヤマトタケルとタケヒコは、右近さんと段治郎さんのダブルキャストです。
今日は右近さんバージョンを観ましたが、後日段治郎さんバージョンも観にきます。
おふたりによると「全然異なる」ということなので、楽しみです。

感想は、思い付いたことを、ぽつりぽつり。
ほとんどまとまりありません、ごめんなさいbearing

まず幕開けの演出にびっくり。
音楽はオーケストラ(の録音)だし、定式幕を使用しないし、照明の使い方も舞台装置の構成も、普段見ている歌舞伎とは全然違う。
板付きで登場する役者さんたちの、立ち姿と影のつき方の美しいこと。舞台全体の構成が絵画のよう。

一幕めでは、大碓命と小碓命が言い争うシーンがあるが、ここは右近さんのひとりふた役。
大きな柱を挟んで、それぞれの役に入れ替わるのだが、その速いこと速いこと!マジックショーを見てるのかと思いましたよcoldsweats01
あまりの速さに、会場から笑いが起きるほど。

また、帝に命令されて、小碓は熊襲・東国の蝦夷・伊吹山の山神を征伐するために次々と遠征するのだけれど、この国々の描写が、素晴らしい。
そこに住んでいる人々の思い、そこに根付いた文化、生活などを、たったひとつの場面づくりで如実に現しているのだ。
またそこにのっかってくる登場人物たちの個性がとても生き生きとしている。
ヤマトタケルの思いのみならず、登場人物すべてにその生き様がきちんと語られていて、壮大ながら綿密な組み立てで全く破綻がない。

そして、そこに大胆な舞台演出があって、一瞬も飽きさせないエンタテイメントなつくり。
ことに、戦いの場の立ち回りの組み立ての迫力と美しさには、ドキドキしてしまって目を離せない。
また相模の国で火攻めにあうシーンの、火の表現のしかたには唸った。
ラストの、タケルの「天翔る」シーンでは右近さんの表情が美しかった。
せつなさの中にも「これが自分の生き方だった」と思わせるような…。

カーテンコールでは、最後に登場した右近さんが、帝の前にひさまづき、思いの丈を伝えるかのような仕草をされていたが、「あぁここでやっと伝えられた」と涙が出た。
どうしてもわかってもらえなかった、そしてわかってほしかった父帝への思い。
右近さんて、「蓮絲…」のときも、カーテンコールの時まで役に入っていて、コワーイ照夜前のままだったのが印象的だったが、ここでも最後まで「タケル」なんだ。
そのことにも、感動してしまった。

右近さんのタケルは、ハムレットみたいだった。
悩める青年、て感じで、純真で正直で素直で、いたいたしくて愛おしい。
勇気と機智に溢れていて、戦いも強いし思いやりもあって前途有望な青年なのに、父への思い出はいつも満たされない寂しさを持っている。
でもそこに暗さはあまりなく、いつも前を向いているような風情が、なんとも魅力的。

タケルにぴったりついているタケヒコの段治郎さんは、好青年だった。
また、兄橘姫の笑也さんがとても素敵で、直情型で感覚的な弟橘姫に対して、分別も愛情もある大人の女性として映り、とても惹かれるものがあった。
ヘタルベ、弘太郎さんの熱演もあるのだろうが、これ、いい役だなあ。最後に、ふりきるように気持ちを固め、タケヒコのあとを追って花道を走り出していくのが、実に印象的だった。

…と、ほんとうに思い付くまま、何も状況を書いていないので、この舞台を観ていない方にはなんのことやら?なのでしょうが(ごめんなさい)じつにじつに、感動しました。
今でも、「ヤマトタケル」の、あのテーマ曲が、頭の中で鳴り響いています。
次回は千穐楽の段治郎さんバージョン、楽しみです。

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