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2008/03/29

獅子虎傅阿吽堂 vol.4 感想

昨日中途半端にエントリーした「獅子虎傅阿吽堂」の感想と簡単なレポでございます。
春なので(え?)記憶間違いや聞き取り違いなどご容赦くださいませー。


囃子レクチャー
ご兄弟三人が揃って登場。
舞台装置は去年の「能楽現在形」のときに使われていたもののよう。(橋懸かりが左右と中央奥の3本あるもの)

三兄弟であることと自己紹介をされたあと、それぞれの担当楽器をご説明。
傅左衛門さんの小鼓から、楽器の構造を説明するために紐をほどいて革の部分、胴の部分を別々に見せてくださり、二枚の革(馬の皮、表と裏で厚さが違うとは初めて知りました)を紐で締め上げたり緩めたりして音を出す。
このとき「打った途端に緩めるんです」と、緩めた時緩めない時の音を続けて打ってくださり、音の違いを聞かせてくださいました。これはとってもわかりやすい。緩めないと、音が固くて小鼓独特の響きがないんです。
因に、胴については素材は桜、これに蒔絵が施されている。この絵柄は各自のこだわり、お洒落で(着物の胴裏に凝る、なんていうのと同じこと、とおっしゃってました)この日の傅左衛門さんは大桜、傅次郎さんは龍、広忠さんは虎でした。
広忠さん、「大鼓は小わきに抱えてしまうので、ほんとうにお客さんからは見えない、自己満足なんです」といいながら「今日は『獅子虎傅』なので『虎』にしました」とちょっと得意そうhappy01でした。
大鼓は素材は小鼓と同じだけれど、革の回りに飾りの漆が施されておりません。これは、火にあてて乾燥させるから。革の周囲にも金物が入っていて、張れるだけぴいんと張って、音を出す。指には指皮をはめて硬質な音を出すそうです。
音の種類は小鼓ほどはなく、4種類の音を打ち分けているそうです。
太鼓は牛の皮。まんなかのおへそみたいなところは鹿の皮、これを樫のばちで叩く。まわりの牛の皮のところと鹿の皮のところでは当然音が違います。おへその鹿の皮のとこのほうが、ポォンと響き渡るような澄んだ音がします。まわりのとこはもうちょっと鈍い音。
因に太鼓を置く台は、黒柿とか紫檀とかを使うそうで、叩いたときかならず太鼓が跳ねるので、そのクッション材としてちょうどいいもの、音の響きのよいものを(曲によって)使い分けるそうです。

と、ひととおり楽器の説明をしてくださったあと、今回の「獅子虎傅…」のテーマ「リズム」に沿った演奏をしてくださいました。
お能のリズムは8拍が基本。歌舞伎のほうは4拍が主で、お能と違ってバリエーションが豊富だそうです。確かに、今月の歌舞伎座でも、「春の寿」三段返しの、みっつの演奏はリズムが全然違いましたものね。
このときの演奏は軽い打ち合わせのみで、ほぼ即興だった模様です。「どうやって終わるの?」「まあまあ…笑」なんて会話をされてましたのでね。
ゆるやかで落ち着いたテンポから入り、途中とても激しく打ち、盛り上げて終了、という組み立てでした。
傅左衛門さんが終わったあとニコニコされてて、数日前の三響会日記に、兄弟で打つのが気持ちが良いと書かれていたのを思い出し、こちらまで嬉しくなりましたnotes

そのあとは、本日の出演者を舞台上にお呼びしてご紹介。ここからは余談も多いので下にたたみます。


松の翁
ゆるやかで格調高い雰囲気から、中盤リズミカルでかなり激しい動きへと、変化に富んだ舞踊。
梅枝さん、ご紹介の時には「自分にはまだまだ」ということをおっしゃっていましたが、凛とした雰囲気、品の良さ清廉さ、とても素敵な「松の翁」だったと思います。
ことに、中盤の激しい動きになったところなどは、ひとつひとつの動きが決まっていて美しかったですし、なによりあの若さであの品格があることが稀有なことではないかと。
ご本人がおっしゃっていたように、まだ二十歳で「翁」を踊られるには早いかもしれませんが、きっとお父様の時蔵さんのように、華も実もある美しい女形になられるのではという片鱗を見た気がいたします。
お囃子は三味線に、傅左衛門さん傅次郎さんお二人の小鼓二丁。めったに見られなくなってしまったので、貴重です。それだけに、感じ入るところもあり、響きあう二丁の音が素敵でした。


三番三
逸平さんによる「ダンスチック」な三番三。
「揉み出し」→「揉みの段」→「鈴の段」というそれぞれにリズムも強さも異なる段による構成で、お囃子も違えば踊りの強弱、リズムもどんどん変化します。
逸平さんの舞台は、トークの時などの雰囲気と違ってたいへん力強いのですが、この日もエネルギッシュな印象でした。
で、出演者紹介のときに話題にのぼっていた、野村家との違い(?)ですが、たしかに異なる雰囲気ではあるのですが、どこがどう違うのかは私にはわかりませんでしたcoldsweats01。が、少々「土着っぽい」というイメージは、わかるような気がいたします。
田園風景の中で、鈴を持って踊っている猿楽っぽい姿が思い浮かびましたもの。
お囃子は、小鼓三丁に大鼓と笛。リズムがどんどん変化していくので、それぞれのパートで聴きごたえがありましたが、ことに「鈴の段」の変化のさまが印象深いものでした。


天請来雨
英哲風雲の会、四人による太鼓のパフォーマンス。
タイトルのとおり、ときにパラパラと屋根を叩く雨粒の音、ときに激しく打ち付ける嵐の音、など緩急に富んだ一曲。
四人がシンクロするところは見事で、一糸乱れずという感じ、その一方で流れるように変化する音を四人で追いかけていくような構成のところではこれまた見事な変化の付け方。
常に常に、激しく叩き続けているので、(しかもこの日のパフォーマンスは座ったままの姿勢なので、下半身の力を入れにくいんじゃないかと思うのだが)相当な体力が必要だと思うのだけれど、最後まで乱れることなく、テンポもくずれず。
技術としてはいろいろ複雑なものがあるのでしょうが、音の印象は、古典芸能のそれよりも、自然に近くシンプルな感じ。芸能というより祈りとか、思いとか、といったものに近いような気がいたします。


供奴
コミカルな踊りで楽しめました。青楓さんの踊りがキビキビしていて、動くところはリズミカルに、とまるところはビシッと決めて、たいへん心地よい。
踊りもお囃子も、とても江戸っぽくて歌舞伎らしい一曲です。
前半の「松の翁」「三番三」などに比べると、レクチャーのときに歌舞伎のリズムはバリエーションが多いと言われていたのが、よくわかります。もちろん、笛や長唄が入っているのでその差がわかりやすいというのもあります。
それにしても、リズムの変化に富んでいるということで、これだけ華やかな印象になるのですね。
その分、神格の域より芸能という位置に近くなってくるとは思いますが。


獅子 〜髪洗い〜
「石橋」より、歌舞伎でいう「毛振り」の部分にあたる「髪洗い」というパート。
三響会、三兄弟からこれははずせないというほどのテーマ曲に近いものでしょうか。
立方がなくお囃子の演奏のみの演目でしたが、それだけにお囃子の音を堪能できて、大満足でした。
ときに激しく、ときに華やかに、神性をも持ちつつ演奏される、ドラマティックな構成は、いつ聴いても感動させられます。この高揚感は、お囃子という音楽からいただく素晴らしいギフトのような気がして、ずっと大切にしていきたいと感じている次第。
この日も「獅子」が聴けて良かったと、ありがたく思いました。


ということでたいへん充実していて、楽しかった「獅子虎傅阿吽堂」
さいごの「獅子」の高揚感を持ったまま、弾むように帰路についたのでした。
ほんというと、この感覚をちょっとあたためていたかったんですが、次に仕事の予定が入ってたので…それが少々残念でしたけどね。
本日も素敵なギフトをいただきましたconfident

出演者紹介のつづきです。
ちょっとミーハーな、私の感想および余談も入っておりますので、あしからずお許しくださいませーcoldsweats01

一番、梅枝さん。
ちょっと緊張の面持ちで現れた梅枝さん、今日の演目の見どころを聞かれると「(振り付けの先生に)お前にはまだムリだろって、言われてるんです…」といきなり弱気(?)な発言。傅左衛門さんが思わずズリッとコケていました(そんな傅左衛門さん、めずらしいーheart04)。
で、傅左衛門さんが「今日の演目『松の翁』は、お能の『翁』からモチーフをとっていて、翁らしい老練さというものは弱冠二十歳の梅枝さんにはちょっと難しいということ」とフォロー。梅枝さん「そうなんです」
でも一生懸命にお稽古されていたようで、その様子を見ていた諸先輩方、口々に褒めてらっしゃいました。この日は若手の企画する会とはいえ皆さん30歳台の若手中堅どころ、梅枝さんとしてはとても緊張されたのでしょうね。お兄さんたちも暖かい目で梅枝さんを盛り上げようとしていて、微笑ましく映りました。梅枝さん、初々しくて端正で、またファンが増えたのではないでしょうか。

二番、逸平さん。
こちらはもう、気心知れた同年代、ということで、みなさんにたくさんいじられていました。ことに、今回萬斎さんが出演されていないので、「茂山家にとってここはアウエィだよね?」「(今日の演目は)野村家とはどう違うの?」などとキツイお言葉(別名愛情ともいう)の数かず(笑)
逸平さん「『翁』に付けるときの『三番三』はどちらかというと土っぽい(土着、と彼は言っていました)んですが、今日のように独立したかたちだとダンスチックに…」というとご兄弟、たたみかけるように「おー、ダンスチックって萬斎さんの得意とするところじゃない!」「いや、その、ダンスチックに土着の感じも混ざって…」と逸平さん、アワアワでした(笑)。

三番、「英哲風雲の会」の四名の皆さん。
こちらは今回特別ゲストとあって、礼儀正しいご紹介ぶり。去年の国立劇場で行われた演奏に、傅次郎さんが感銘を受け、たっての希望で出演していただいたとか。今年のコクーン歌舞伎にも、メンバーのひとり上田秀一郎さんにご出演いただくのだそうです。
傅次郎さんいわく、古典芸能の太鼓とは全然違う音、リズムの取り方で、そのどれもが素晴らしい。技術的にも、彼等は英哲さんのところで一二の位置にいる方たちなので、その音の充実ぶりにもご注目いただきたい、と熱弁していらっしゃいました。
で、叩き続けている彼等の鍛えられた体がすごいんです、という話を傅次郎さんがチラッとしたら、舞台後ろのほうにいた広忠さんや逸平さん、「すみません、ちょっとさわらせてください」と腕とかにさわり「すっごーい!」と連発。傅次郎さん「なにやってるんですか!」と笑いをこらえながらたしなめていらっしゃいました(笑)。

四番、尾上青楓さん。
こちらも同年代ということで、容赦なく(笑)。
今日ご披露くださる「供奴」は華やかでテンポよく、コミカルな味わいもある演目で、歌舞伎ではいわゆる「奴姿」で踊るのですが、青楓さんは「自分の体型だと、あの奴の扮装をするのはとてもいただけない。でもぜひ踊りたい舞踊で、今回素踊りなので喜んでやらせていただく」ということでしたが、すると周りの方々「体型って、○十郎さんみたいなのがいいってこと?」。。。「いやそんな、名前出したらどんな体型かわかっちゃうじゃない」と慌てる青楓さんに追い打ちをかけるように「○頭身ってこと?」。。。
たしかに青楓さんは小顔でスラッとしていて、昔風ないでたちには合わないかも…coldsweats01

ところどころ脱線したがらも、四組の方のご紹介を終え、楽しくレクチャーを終了。
さらに余談ですが、どなたかの紹介の途中に、広忠さんがスーっと舞台から消えられ幕内に。打ち合わせにはそれはなかったらしく、はたまた幕に入る理由もなかったのか、傅左衛門さん傅次郎さん、顔を見合わせ「?」というお顔。すぐに「ま、ね。自由だから」とおっしゃってて、笑ってしまいました。ご長男のそういう行動、ままあることなんですね。それにしても広忠さんのそういう自由さ、かなり好きです(笑)
ほどなくして、何事もなかったように戻られた広忠さんにさらに微笑ましく笑っちゃいました。

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コメント

>kirigirisuさん、本当に楽しかったですよね。みなさんの仲の良さ・チームワークの良さがほのぼのしていてhappy01
広忠さんなにをしに裏に入っていたんでしょうね(笑)

舞台装置、お能狂言関係はパブリックシアターではあれを使うんですね!私は前回の能楽現在形に行ったのが初めてで、それ以来の観劇だったので「あ、おんなじだ」とくらいにしか思わなかったのですが、いろいろ改良もされているんですね。
パブリックシアターならではの舞台空間構成になるので、それがどんなふうに使われるのかも楽しみなんです。

私は今回、下手より・3列目だったんですが、どこもとても良く見えて楽しみました。

おぉっ!さすがmamiさん。
わたしが端折りに端折った(笑)ところも書いてくださっているので、思わず脳内再生しちゃいました(^^) 三響会の公演とはまた違って、和気藹々な感じで楽しかったですね。広忠さん、夜の部でもふっといなくなって、すぐに戻ってきました。なんだったんでしょうね(^^?

あの舞台装置は、狂言とかお能関連の演目のときに使われています(萬斎さん考案?!)今回、横っちょに黒い三角のスペースが作られていましたが、あれは唐人相撲の出演者の人数が多いために能舞台に沿って演者の方が座ると壁ができて客席から舞台が見えなくなってしまうために唐人相撲の演者さんが座るスペースとして急遽作ったそうです。27日は1階の上手側の席だったのですが、確かに長唄さんが座られると壁になって舞台が見づらい部分もありました。

>SwingingFjisanさん、こんなに長いものをお読みいただいてありがとうございます。
あれもこれもと、つい長くなってしまうわりには、肝心なところは忘れてたりして、恐縮なのですが…coldsweats01
梅枝さんはノーブルで、ほんとうに線の綺麗な踊りでした。
内容は充実していて、とても楽しい企画でしたよ。お囃子好きの私としては、こういう機会があればまた、ぜひ行きたいものです。

素敵なレポート、ありがとうございます。お囃子のレクチャーも、梅枝クンの踊りも、和太鼓も、そのほかの演目もどれもどれも見たかった、聞きたかった~。無理してでも行けばよかったかな思う気持ちが強まりましたが、なかなかそうもいかず。
でも、mamiさんのおかげで、その場の様子が脳内に浮かび、私も一緒に楽しませていただきました。

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