« 久々の歌舞伎・亀治郎さん巡業千穐楽 | トップページ | 能楽堂で歌舞伎囃子 »

2008/08/04

夢の響宴・囃子の会

8月2日(土)第六回 囃子の会 @歌舞伎座

に行ってまいりました。
たった一回きりの公演で、しかも出演者は能楽界・歌舞伎界の錚々たるお歴々に、今後の各界を背負っていくと思われる若手実力派の方たち。
現在まさに「背負ってたっている」亀井忠雄さん、田中佐太郎さん(というお名前ですが女性です)ご夫妻の主催ならでは、このおふたりだからこそこれだけのお顔が揃ったのだと、まさにオールスター戦を見るような気持ちで拝見させていただきました。

なんて贅沢な一夜!


三番叟
まずは三兄弟にお母さまの佐太郎さん、笛の福原さんとお三味線での「三番叟」、立方は藤間勘十郎さん。
勘十郎さんの踊りは、まだお若いのに老練された落ち着きがあり、同時にキビキビしていて若々しい。
その潔さが好き。
ご兄弟と佐太郎さんの共演を、舞台で見られるなんて感動。若い舞台を佐太郎さんがぐっと引き締め、なおかつ温かい包容力で包んでおられた。

鶴亀
長唄「鶴亀」、若い鶴亀従者の梅枝さん萬太郎さん梅丸くん。
梅枝さんはここ一年ほどでほんとうに見違えるほど舞台に映えるようになった。梅丸くんはきっちりした持ち味があって上手い。
囃子方同様踊りのほうも、若い役者さんを帝役の梅玉さんがどっしりとした風格品格で包んでいる印象。

舞囃子 小袖曽我
待ってましたの大物揃いの舞台。
梅若六郎さん、観世銕之丞さんともに、体格もさることながら凄まじい存在感で、あの広い歌舞伎座の舞台が埋め尽くされていた。
もちろんそれは、囃子方との技量がつりあってのこと、というよりやはり囃子方が舞を支えているのだとつぶさに感じられる舞台。小鼓の幸流(幸清次郎さん)は、関東ではなかなか見られないので嬉しかった。
この「小袖曽我」という物語性を、深く感じることはまだ私には難しかったけれど、その思いが存分に伝わってくるものであった。

静と知盛
富十郎さんの舞、ことに前シテ・後シテの演じ分けはさすがで見応えがあったけれど、いかんせん大向こうかかりすぎ。
囃子の会であるのだし、お囃子ファンの私としては、そこをじっくり堪能したかったのに、けっこう肝心なところでかけ声がかかっていてがっかり。
ということは舞の肝心なとこに音が入るということなのねと、改めて実感できたけど。舞の間合い、呼吸の間合い。そういったところに鳴りものの“音”が打ち込まれるのだろう。
そう思うと、古典芸能の間合いの深さ緻密さを感じずにいられない。

羅生門
吉右衛門さんの素踊り。ドラマチックな構成なので、わかりやすく面白かった。
囃子方は傅左衛門さん広忠さんに佐太郎さんと、めったに見れない組み合わせ。

能 楊貴妃
(私にとって)この日いちばんの豪華な演目。おシテ、ワキ方は勿論のこと、地謡方がもうそりゃたいへんな豪華さで、オペラグラスでガン見(あらお下品)
囃子方も実に錚々たる面々で、そんなメンバーいちどに舞台にあげていいんですかあ?という…もう出演者だけでも倒れそう(笑)なのに、当然のことながら舞台の「気」も最高潮!
おシテの舞も装束も面も、ことのほか良かったし、ワキのお衣装風格もこれまた格別。
ああもう私にもっと、聴く耳が、受け止める魂が、あったなら!と思う、夢の舞台でした。

老松
幕があがったときの、玉三郎さんのあまりの美しさに思わずため息が…。
囃子のリズム曲調の変化とともに、起伏に富んで美しくて、また玉三郎さんが心を預けて自由に舞われているふうな気がして、最後まで夢見心地で楽しみました。

番外 獅子
番外とはいいながら、今日のこの演目を一番に楽しみにしてきた方が、この歌舞伎座にどれほどいたことか。
一家揃って、そしてお笛に福原寛さんを加えての、この方たちのテーマ曲のような「獅子」。
この独特の間合い、その間合いにある呼吸、調べをきりきりと絞る音、その隙間を楽しむかのように“ポン”とはいってくる“音”。
一瞬一瞬に込められた「気」の連続が、ひとつひとつに集中させ、天にものぼらせてくれます。
だから、まだまだ浅いけれども、今の私のその浅さでもってして、私は「囃子」が好きなのです。


あまりの豪華さに、わくわくしっぱなしの「囃子の会」でしたが、やはり亀井忠雄さん、田中佐太郎さんあってのこの企画でありました。
感動したのは、このおふたりが、いまのご自分たちと釣り合う(といっていいのでしょうか?失礼ながら…)芸格の方達ばかりでなく、若い次世代の方の経験の場としてもこの場を提供しておられるように感じたことでした。
なんて温かいかたたち。そして、なんて厳しい環境。伝統芸能の奥行きと間口のありかたを、少しばかり感じた一夜でもありました。
広忠さんが、お能ではなく歌舞伎のほうで大鼓を打たれていたのが少々残念でしたが、忠雄さんがいらしたことだし、経験として貴重だったのかもしれません。
最後の「獅子」で、忠雄さんと広忠さんが並んで大鼓を打っている、その貴重な場面を、目に耳に焼きつけて、なにやら鼓動が早くなっているのを感じながらこの日の歌舞伎座をあとにしたのでした。


三番叟
 立方  藤間 勘十郎

 笛   福原 寛
 脇鼓  田中 傅左衛門
 頭取  田中 佐太郎
 脇鼓  田中 傅次郎
 大鼓  亀井 広忠

 三味線 杵屋 勝国穀/杵屋 勝松/今藤 美治郎
     杵屋 勝正雄/杵屋 栄次郎


鶴亀
 帝   中村 梅玉
 亀   中村 萬太郎
 従者  中村 梅丸
 鶴   中村 梅枝

 笛   鳳声 晴由
 小鼓  田中 長十郎
 小鼓  田中 傅次郎
 小鼓  田中 傅左衛門
 大鼓  望月 太左吉
 太鼓  田中 佐太郎

 唄・三味線  すみませんが省略させていただきます


舞囃子 小袖曽我
 シテ  梅若 六郎 
 ツレ  観世 銕之丞

 大鼓  亀井 忠雄
 小鼓  幸  清次郎
 笛   松田 弘之

 地謡  坂口 貴信/角当 直隆/山崎 正道
     観世 喜正/梅若 晋矢/片山 清司


静と知盛
 立方  中村 富十郎

 笛   福原 寛
 小鼓  田中 傅左衛門
 大鼓  亀井 広忠
 太鼓  田中 傅次郎

 唄・三味線  すみませんが省略させていただきます


羅生門
 立方  中村 吉右衛門

 笛   鳳声 晴由
 小鼓  田中 傅左衛門
 大鼓  亀井 広忠
 太鼓  田中 佐太郎

 唄・三味線  すみませんが省略させていただきます


能 楊貴妃
 シテ  観世 清和
 ワキ  宝生 閑

 大鼓  亀井 忠雄
 小鼓  幸  清次郎
 笛   松田 弘之

 地謡  坂口 貴信/角当 直隆/山崎 正道/観世 喜正
     片山 清司/観世 銕之丞/梅若 六郎/梅若 晋矢


老松
 立方  坂東 玉三郎

 笛   田中 傅十郎/田中 傅太郎
 小鼓  田中 佐吉郎/田中 傅九郎/田中 源太郎
     田中 佐英/田中 傅左衛門
 大鼓  田中 傅八郎
 太鼓  田中 佐太郎/田中 傅次郎

 三味線・唄  すみませんが省略させていただきます


番外 獅子
 笛   福原 寛
 小鼓  田中 傅左衛門
 小鼓  田中 佐太郎
 大鼓  亀井 忠雄
 大鼓  亀井 広忠
 太鼓  田中 傅次郎

« 久々の歌舞伎・亀治郎さん巡業千穐楽 | トップページ | 能楽堂で歌舞伎囃子 »

コメント

>でこぼこさん、初めまして。コメントありがとうございます!
また、いつもご覧になってくださっていらっしゃるとのこと、本当にありがとうございます。

私の拙い感想では、舞台の素晴らしさのほんの少しでさえも伝わってないのではないかと心配ですcoldsweats01
機会があればぜひ、生でご覧になれたらいいですね!
劇場の雰囲気も含め、本当に楽しいですよshine

「トップランナー」の情報、ありがとうございました。
勘十郎さん、どんなお話をされるのか今から楽しみですね。

拙いブログですが、これからもどうぞ、よろしくお願いいたしますね。
またお越し下さいませ。お待ちしておりますconfident

はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいています。

歌舞伎や伝統芸能に興味があるのですが、個人的に観劇する機会が少ないのが残念です。

こちらのサイトで沢山の感想や情報を知ることができ、今は妄想!?だけで満足しています。これからは妄想から卒業して、是非観劇参加していきたいです。

追伸。現在、藤間勘十郎さんの観劇募集をNHKのトップランナーで行っているようです。9月5日まで。

これからも、お邪魔させていただきます。

リアルな情報、楽しみにしています

>kirigirisuさん、本当にわくわくドキドキな一夜でしたね。
私も、忠雄さんと広忠さんが並んで打っている、そのシーンだけで、行って良かったと思いました。
どんな思いで打たれていたのか想像を絶しますが、私も胸がいっぱいでした。

豪華なメンバーですっかり舞い上がってしまいました。
なんといっても忠雄さんと広忠さんが並んで打っている
のを見ることができたのは、わたしにとっては、たくさんの「
ありえないぃ~」の中でベスト1だったかもしれません。
お二人がどんな思いで打たれていたのかと思うと
ウルウルしてきちゃいました。

>みゆみゆさん、前回のにいらしたんですね!いいなあ。私はまだその頃はこんなに古典芸能に嵌ってませんでした(^-^;
「小袖曽我」お稽古されたんですか!難しそう。
もうね、六郎さんと銕之丞さんで、舞台いっぱいでしたよ(笑)迫力!でした。
忠雄さんと広忠さんが並んでおられるところを見ただけで、なんだか胸が熱くなりました。
また次回を、ぜひとも期待したいですねえ。

>SwingingFjisanさん、本当に豪華な競演で、わくわくしっぱなしでした♪
お囃子はふだんは、舞台の効果音とか演出の一部、
BGMですけれど、こしてクローズアップしてくださるとまた、その良さがあらためてわかりますよね。
お囃子好きの私としては、実に実に、願ってもない公演で楽しませていただきました。
大向こうさんはこの日ばかりはちょっと遠慮して欲しかったですね(^-^;;

こんにちは。
私も行きたかったです!!

前回の「囃子の会」には行きましたが、よかったです。
『小袖曽我』いろんな意味で迫力ありそうですね!!
舞囃子の部分はお稽古したばかりでしたので余計に見たかったです。

玉三郎さんも素敵だったことでしょうね!!
『獅子』も忠雄さんと広忠さんが並んで大鼓なんて、普通ならありえないですもんね!!

レポ、お待ちしておりました。
私など、豪華メンバーだとは思いながら、実のところ、それほど豪華なんだ~とはわかっておりませんでしたから、こうしてmamiさんのレポを拝読すると、素晴らしい演奏会を聞けたんだな、と誇らしくさえ思えてきました。
そして、普段、歌舞伎のお囃子はなにげなく聞いているのに、こうやってその部分に焦点を当ててみると、その良さがしみじみわかりました。
「舞の肝心なところに音が入る」ということ、なるほどと思いました。ということは、大向こうさんも肝心のところで声をかけていることになるわけですね。そのタイミングはさすが、ですが、今回の趣向には全然合いませんでしたね。大向こうには大向こうの合う雰囲気というものがあるものなんですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/106794/22755197

この記事へのトラックバック一覧です: 夢の響宴・囃子の会:

« 久々の歌舞伎・亀治郎さん巡業千穐楽 | トップページ | 能楽堂で歌舞伎囃子 »

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

お気に入り☆BOOKS

  • 小川洋子: 「ブラフマンの埋葬」
    ブラフマンという不思議な生き物に関わった私の、ゆるやかな変化の物語。
  • 吉本ばなな: 「デッドエンドの思い出」
    シアワセとフシアワセの境目ってなんだろうかと、そのボーダーラインの不確かさはむしろシアワセな贈り物なんじゃないかと思わせてくれた作品。
  • 駒形克己: 「空が青いと海も青い」
    ぜんぶ広げると1枚の紙になってしまう、不思議な絵本。広げたり畳んだりしてみるとまた、構成が変化しておもしろい。書いてあることは、一言なんだけどけっこう科学的。
  • イワサキユキオ: 「Say Hello! あのこによろしく」
    どのページを開いても、満面の笑顔になっちゃう。笑顔なのに、ウルウルしちゃう。子犬たちの成長が、愛情たっぷりの写真で綴られています。
  • 川上弘美: 「椰子・椰子」
    ありえなさそうなんだけど、ありえちゃうような不思議な日々を淡々と過ごす「私」のへんてこりんなお話。山口マオさんのイラストも可愛い。
  • 西岡常一・小川三夫・塩野米松: 「木のいのち 木のこころ 天・地・人」
    寺社建築に携わる二人の宮大工の棟梁のお話。宮大工という未知の世界の話はとても興味深く、また「真」をみるということは万事共通なんだと感じ入りました。

最近のトラックバック

無料ブログはココログ