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2008/08/05

能楽堂で歌舞伎囃子

8月1日 〜伝統芸能に吹く新しい風〜
     歌舞伎囃子と舞踊の競演  @国立能楽堂

去年やはり国立能楽堂で行われた、亀井広忠さん主催の能楽囃子コンサート。その第二弾として、こんどは弟さんである田中傅左衛門さん傅次郎さんのおふたりによる「歌舞伎囃子」のコンサートが行われました。
今回は、舞踊もということで市川亀治郎さんもご出演。
亀治郎さんの踊りを能楽堂の舞台で観られるなんて、めったにない機会かと思い、期待して行ってまいりました。

舞踊 供奴
まずは素踊りの「供奴」。
橋懸かりから登場する亀治郎さんが新鮮。ことにこの日は、お席が脇正面の橋懸かり寄りでしたので、ものすごく近くで拝見できて嬉しさにドキドキしましたねぇshine
さてその囃子と踊りですが、「供奴」はリズミカルで軽快なお囃子、もちろん踊りも楽しいものなのですが、亀治郎さんの供奴、どこか端正な重厚感があります。足さばきなどはとっても軽やかなんですが、少し前に観た尾上青風さんのと雰囲気が全然違います。なんていうか、「ヒャラヒャラ」(←これは褒め言葉!)した感じがないというか。
いろいろな「供奴」があると聞いていますので、それぞれの持ち味なのでしょうが、ずいぶん印象が違うのでその驚きとともに、とても楽しめました。
亀治郎さんは相変わらず手の動きがキレイ。決めた時のかたちもほんとうにキレイ。
歌舞伎は正面が決まっていますが、今回それを横から見たことでも、印象が違っていたのかもしれません。そういう意味でもレアでしたwink

演奏 歌舞伎囃子
さいしょにプログラムを見たとき、「歌舞伎囃子で○十分?」と思いましたが、さまざまな歌舞伎囃子の演奏を交えてのレクチャーとトークも入っており、これがとても面白く興味深いものでした。
まずご兄弟お二方が舞台に登場してご挨拶、そしてゲストの亀治郎さんも舞台に登場。
三人でのトークは、能楽堂舞台での歌舞伎の公演ということについて、ご兄弟と亀治郎さんのおつきあいについて、などなど。

まず能楽堂での踊りはどうだったかと聞かれ、舞台の床が歌舞伎と違って堅いのだそうで(能楽舞台は床下に瓶を入れてある。音の響きを良くするためらしい)足当たりが普段と全く違うそう。また、普段は見られない横からの視線(脇正面席ですね)もあるので勝手が違って緊張したと仰られてました。(私からすればこの角度から観れて非常にラッキーでした)
また、供奴を踊るのは8歳のとき以来だとか。忘れてると思ったけど、意外と体が憶えてるもんですねーと。ここでお三方、昔やったことはよく憶えてるけど、最近のはすぐ忘れちゃう、と笑いをとっておられました(笑)。
お三方はちょうど、ご兄弟の「三響会」、亀治郎さんの「亀治郎の会」を発足したのが同じ時期だということで、お互いライバルのような、同士のような感覚を持っているそうで、同年代でもあり切磋琢磨されてきたようです。
いい仕事仲間、同士、といった感じなのでしょうね。そして亀治郎さんは次の演目「羽衣」の拵えのためにご退場。

そのあと、歌舞伎座で開演前に黒御簾内で演奏されているお囃子や、雨の音・雪の音・水の音・波の音…などを次々を説明を加えながら演奏してくださって、普段はお芝居の効果音としてなにげに聞いている音も、いろいろな工夫や物語性があることをあらためて知り、新鮮な感覚でした。
こんどは、開演前の演奏なんかも、もっとよく聴いてみようと思います。(いつもギリギリで駆け込むので、あまり聴いたことなかったんですよね…coldsweats01

そのあと「特別ゲストがもうひとり」とのこと。え?誰?と思ったら、なんと私服に足袋の(笑・能楽舞台では足袋じゃないとNGなのよね)広忠さん登場!思ってもみなかったのでちょっと興奮しちゃいましたが(照)。
午前中に、次の日の「囃子の会」のリハーサルがあり三人ご一緒だったそうで、その流れで急きょ「来てよ」ということになったそうです(笑)
「こんな格好ですみません。支度のあいだ一分しゃべれといわれました」と広忠さん。困ってるふう?と思いきや「話すの好きなので」と5分オーバー。笑。

演奏 勧進帳
長唄の勧進帳。舞台中央に斜めにお囃子方が並びたつ。とっても見やすくてよかったのですが、音の響き具合はどうなんでしょうか?お能の舞台において、斜めに陣取るのって、難しいのではないかなとちらっと思ってしまいました。
演奏そのものは物語性があって緩急に富んだ柔らかい感じ。何度も歌舞伎の「勧進帳」を観ているせいもあるかもしれませんが、いろいろなシーンが目に浮かびます。
能楽堂では「安宅」を聞き慣れている(というほどでもないか)のでずいぶん柔らかく聴こえたのかもしれませんね。

このあと再び広忠さんが、こんどはお一人で舞台に登場。こんどは「羽衣」の準備のために5分しゃべってくれ、と(笑)。
広忠さんもお能「安宅」と歌舞伎の「勧進帳」の違いを語られてまして、力で押しまくる安宅に対し、起伏に富んだ勧進帳、というような表現で仰られてましたね。
また、歌舞伎の踊りを能楽堂で観られるのは貴重なので、自分も見所で勉強させていただきたいと。
歌舞伎とお能と、それぞれに違う表現方法をとっているところもあるし、性質の異なるところもあるが、どちらも大切な伝統芸能、自分は歌舞伎の血とお能の血の双方が流れている家に育っているので、それを活かしていきたいとお話しされてました。
そして、能楽師として、歌舞伎座の舞台につのが「夢」なのだそうです。

長唄 羽衣
亀治郎さんお天女は、白塗りできちんと拵えをしての登場。橋懸かりから登場した天女の美しさに、思わずワァーッとため息がもれてしまいました。
歌舞伎座などでは見たことのない拵えで、ちょっと神事に近い雰囲気。対する伯竜は、なんと(きっと)大抜擢の段一郎さん。お能の形態をそのままとっていますので、ワキからの登場になりますから、段一郎さんかなり緊張されたのではないでしょうか。
亀治郎さんの柔らかな舞、はんなりとキラキラしていて素敵でした。その雰囲気、踊りの感じともに、演目ならではのものばかりではなく、能楽堂という環境のせいもあったのではないかと思います。
歌舞伎座の舞台はどちらかというと「粋」ですが、能舞台は「高貴」な感じがいたしますね。
囃子や唄は、先日ちょうど「謡」と「リズム」のちょっとしたレクチャーを受けたときに習ったところ。その違いもなんとなくわかるところもあり、興味深く楽しめました。


余談ですが…
お能舞台で歌舞伎のメンバーを見ることが不思議な感覚でしたが、そのことがまず楽しめました。
不思議な感覚の第一は、橋懸かりをとおっていく立方。歌舞伎での舞踊とお能の舞とでは、足の進め方が全く違うのだということがよく分かりました。
お能では、ほんとうに頭が動かないんですよ。動きが滑るようなんです。
亀治郎さんは、いままで歌舞伎座などで見ていていも、かなり腰が低くて頭が動かない安定性があると感じていましたが、お能のそれとは動きの種類が全然違う。
異なった動きをするひとが、橋懸かりを歩いているのが不思議で、面白かったですね。
そして、お三味線が能楽堂に響いているというのも…新鮮でした。
それと、歌舞伎ではやっぱり拍手をしたくなってしまうのですが、能楽堂では違和感があり、なんだかいつ拍手したら良いものやら、とまどってしまいました。(尤も、この日のお客さまは盛大に拍手しておられましたが)

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コメント

>SwingingFjisanさん、ありがとうございますconfident
この日は、「歌舞伎囃子コンサート」でしたので、場所が能楽堂でも内容は歌舞伎という、ちょっと変わった趣向でした。(こういうのだったら、大丈夫なのでは?)
能楽舞台で舞う亀治郎さんを見たことがなかったので、新鮮な感動でしたnotes

楽しく拝読しました。亀治郎さんの動きが目に見えるようです。
mamiさんの記事を拝読すると、お能の楽しさが伝わってきます。私のお能体験は、mami楽堂でsmile

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