« 日記だよ!ニッキだよね…。にっき の はず。。 | トップページ | すげーーー! »

2008/08/19

生まれたてみたいな、、松尾スズキ。

というわけで(?)「有言実行」@北島康介くん にならい、早速至近のカンゲキから。
8月18日 「女教師は二度抱かれた」大人計画 @シアターコクーン
200808182230000

久しぶりの、舞台の、松尾スズキさん。単純に、うれしい。

今回の話は、たったいちどのセックスで人生が総崩れになった女教師・山岸諒子(大竹しのぶ)と、その原因であるもと生徒でいまは演劇界の風雲児と呼ばれる演出家・天久六郎(市川染五郎)の再会を軸に、歌舞伎界の異端児・滝川栗乃介(阿部サダヲ)などが絡んで、どーしようもなく壊れていったり、どーしようもないのに壊れなかったりする、物語。
こう書いてしまうと、「なんてこった」なストーリーなのだが、その奥に見えかくれするキリキリしたせつなさだとか、ギリギリのところで移行していく感情だとかが混ざりあって、深く深く、人間だとかその事象の中にはまり込んでいく渦のようなものを感じる。
松尾さんの作品では、もともと「ものすごくせつない」とか「たまらなく悲しい」といったものがない。「あれ?いまとっても、せつないと思ってたのに、違ってたのかな」とか「悲しそうだけど、それって、バカらしいじゃん?」みたいな、いつでも裏表がいっしょくた、みたいなとこがある。ボーダーがないのだ。
それは今回も変わらないんだけど、なんだかそのボーダーが、素直に表現されてるように感じた。

いままでは、悲しさやせつなさの照れ隠しのあまり、あるいは人間がそうそう正直にそんな感情だけを持ってるわけないだろう、みたいな感覚で、松尾さんは、いろんな余分(演出、ともいうか)なものをありとあらゆるところに積み重ねていた。だから、なにもなかった地表に、積み上げられ構築されたそれらで、表面はギザギザ、ガチャガチャ、バサバサしていた。
でも、今回のは、同じテイストっぽくありながら、なんだか、むきタマゴみたいだった。
つるつるしてて、湯気がたってるの。生まれたて、みたいな、そんな感じ。

なんだか、松尾さんの自分自身の、禊、っていうか、そんな感覚を感じてしまった。

で、ボーダーがない、という感じは先の映画「クワイエット・ルームにようこそ」でも味わったもの。
正気なのか狂気なのか、壊れないのか壊れていくのか、せつないのかバカらしいのか、はいつも紙一重で、どこからがどう、というのはない。一緒に、存在している。
そのことが、私には少しだけたまらなく、愛おしかった。

大竹しのぶは、いつも期待を裏切らない達者さで、今回は狂ってしまった女の役なのだけど、どこまで本気で受け止めたらいいのか、その境目がさっぱりわからなかった。どこも真剣に対応してしまいそうだし、それにしてはなんだかおかしいし。キュートで、変で、長時間は相手にしたくないような…。登場して最初の声が、市原悦子みたいで、笑った。
染ちゃんは、歌舞伎のファンの人は(まあ、私も歌舞伎ファンではあるけど)どう思うの?と心配になるような、だらしのなーいフラフラした役で(劇中においてはいちおう二枚目的な位置なんだけど)個性のきつい大人計画の中にあっては、存在が薄かった。けど、それこそが、この役の持ち味なんだろうと思う。きっと、こういうの、やってみたかったんだろうね。いつも様式の中に生きてるひとなのに、妙にリアルで、笑った。
サダヲちゃんは、本職の歌舞伎俳優・染ちゃんの前で、歌舞伎俳優の役をやらなきゃならなくて、大変だったろうなあ(笑)。でも、大人計画ふうの、堂にいったなかなかの歌舞伎俳優ぶりだった。いつものことながらこのひとの器用さには、恐れ入る。そして、団員だからといってしまえばそれまでなのだが、松尾ワールドをシュールにリアルに表現できるのはやっぱりサダヲちゃんならでは。相変わらずなにをやってもキュートだし、歌のクオリティがやたら高くて、へんに笑った。
そして、松尾さん。今回変な役で4回登場する。インチキフランス語とかインチキ韓国語とか、あとはレロレロしゃべるから、なにいってるのかさっぱりわからない。んだけど、歌と踊りはパキッとしてて、あれ、なに、松尾スズキこんなのできるの?と。目論みに嵌った感、大あり。ハタ坊と同じ頭をしてたところに、なにやら今回、集約されたものを感じる。いままでは、薬飲まなきゃ(脚本)書けないし、でも書かないと息できないし(マグロか)っていう閉塞感を感じていたのだが、今回、ちょっと空気が抜けてたような気がして、良かった。

という、なんとなく新たなステージの松尾さんを見れたような気がした舞台だったが、積み上げても積み上げても壊しちゃう、出かけても出かけても戻っちゃう、みたいなちょっと病気で正気な松尾ワールドは、相変わらず。そこのところが、うなづけないところであり、愛しいところでもあり。
たいへん楽しませていただいた。

ちょっと、おまけな感想(笑)ネタバレあり。

サダヲちゃん演ずる歌舞伎役者・滝川栗乃介は、最初に名前だけ登場する。そのときの呼ばれ方が「タキクリ」。これだけでも会場、大ウケ。
ちなみに、「乃」は実際の歌舞伎役者の名前にはあまり使われてない。「之」が多いの。「介」もそう。「助」が多い。松尾さん、ほんとうの歌舞伎役者に敬意を表したか?完全にパロったか?

作中、老婆(宍戸美和公)の死体が出てくるんだけど、かけてある布をとると、黄色い。(いや、ちょっとしか見えなかったんだけど…黄色っぽかったような…?)もう笑いましたよ。もちろん、八月、歌舞伎座で上演されている「らくだ」を思い出したから。これ、同月に上演されてるのを知っててやったのか?偶然か?それにしても笑いました。歌舞伎ファンでないとわからないけどね。

諒子の元婚約者の(←超資産家)経営してるのが動物園、というのも笑える。諒子は諒子であって、ブランチ(@「欲望という名の電車」)なのね。直接的すぎて(いや、ひねりがありすぎて?→同じ作者・テネシーウィリアムズの「ガラスの動物園」ね)終わるまで思い浮かばなかった。笑。

平岩紙ちゃんが、ものすごく女っぽくなっててびっくり!今までは少女って感じだったのに。同時に、肝のすわった女優になってきたなあと感じる。彼女のフワフワ感って、とっても好きなんですよね。

いっぽうの(?笑)荒川良々くん。相変わらずのビッグぶり。この人なんて面白いんだろう。ヌボーとして大きな体を持て余しているかのようなんだけど、いっきなりポテンシャル高くなる。あれ、今までの、嘘?と思う。謎な男(笑)その謎ぶりが松尾ワールドにぴったり。

オリンピックなどの時節ネタもたっぷり。しみじみと、「土佐○子はつらかったろうねえ。外販拇指と、世界一堅いアスファルトのぶつかりあい…たまんないねえ…」なんて最新情報から「イナバウアー」まで復活してました。
あと、最前列の通路側の席がひとつあいてて、「その空席、気になるんだよっ!」っていってたのが、超絶に笑えました。

休憩時間の前に、ハタ坊スタイルの松尾さんが幕前に登場、「そんなにいらないかもしれないけど、いつも15分のところ今日は5分おまけして20分の休憩だっ!」とご挨拶。場内大喝采。
カーテンコールは2回。大人計画のカーテンコールは、舞台のはっちゃけぶりとは異なって、いわゆる小劇場っぽい、携帯電話ふたつ折にするみたいなお辞儀で終わる。そういうとこ、好きですね。

« 日記だよ!ニッキだよね…。にっき の はず。。 | トップページ | すげーーー! »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/106794/23080235

この記事へのトラックバック一覧です: 生まれたてみたいな、、松尾スズキ。:

« 日記だよ!ニッキだよね…。にっき の はず。。 | トップページ | すげーーー! »

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

お気に入り☆BOOKS

  • 小川洋子: 「ブラフマンの埋葬」
    ブラフマンという不思議な生き物に関わった私の、ゆるやかな変化の物語。
  • 吉本ばなな: 「デッドエンドの思い出」
    シアワセとフシアワセの境目ってなんだろうかと、そのボーダーラインの不確かさはむしろシアワセな贈り物なんじゃないかと思わせてくれた作品。
  • 駒形克己: 「空が青いと海も青い」
    ぜんぶ広げると1枚の紙になってしまう、不思議な絵本。広げたり畳んだりしてみるとまた、構成が変化しておもしろい。書いてあることは、一言なんだけどけっこう科学的。
  • イワサキユキオ: 「Say Hello! あのこによろしく」
    どのページを開いても、満面の笑顔になっちゃう。笑顔なのに、ウルウルしちゃう。子犬たちの成長が、愛情たっぷりの写真で綴られています。
  • 川上弘美: 「椰子・椰子」
    ありえなさそうなんだけど、ありえちゃうような不思議な日々を淡々と過ごす「私」のへんてこりんなお話。山口マオさんのイラストも可愛い。
  • 西岡常一・小川三夫・塩野米松: 「木のいのち 木のこころ 天・地・人」
    寺社建築に携わる二人の宮大工の棟梁のお話。宮大工という未知の世界の話はとても興味深く、また「真」をみるということは万事共通なんだと感じ入りました。

最近のトラックバック

無料ブログはココログ