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2008/08/27

恋する猿弥ちゃん

8月27日 新・水滸伝 21世紀歌舞伎組 @ル テアトル銀座

千穐楽も迫っておりますが…ネタバレありますのでご注意。
タイトルにもしちゃいましたが、初めてみる「恋する猿弥さん」に、すっかりもっていかれた舞台でした!笑。


21世紀歌舞伎組の実に久しぶりの公演、幕があくと実にシンプルな舞台装置。黒い鉄骨の橋のようなものが舞台を左右に横切っており、上手側下手側それぞれに、前後に降りることのできる鉄骨階段がある。
これは全編にわたって舞台転換されることがない固定舞台である。
これをうまく使って、橋の上下に役者を位置することにより、見た通りの高低差を表していたり、全く違った場所ー例えば人物同士の位置関係が実際には客席に向かっているのにも関わらずお互い向かいあっている設定とか、または敵陣と梁山泊という全く違う場所での会話が同時進行で行われるーを表現していたりする。
小劇場系からスタートした私の観劇ライフにあって、こうしたテイストの舞台装置や舞台空間の使い方は好みだけど、歌舞伎っぽくはない。
役者さんたちはもちろん歌舞伎ふうメイクだけれど、衣装は勿論大陸ふうである。
音楽も、西洋楽器の音もふんだんに入り、しかもお囃子さえもすべて録音なのはちょっと残念。でも舞台も狭いし仕方ないか。テーマ曲が先般みた「ヤマトタケル」にそっくり。
ということで、あまり歌舞伎っぽくなく、ある意味「振興劇団」ぽい印象の舞台だった。

ストーリーは、ならず者の集団「梁山泊」の面々の戦いぶりを描いているのだが、軸となるのは、わけあって朝廷から追放された林冲(市川右近)が、失っていた自身への希望を梁山泊の面々の熱い思いによって取り戻し、梁山泊の大将となるまで。右近さん、強くて力があるのにずっと悩んでいる役で、ヤマトタケルみたいだった。(ちなみに、その林冲を慕ってついてくるのが弘太郎さん。これも、ヘタルベみたい)

もう一方の軸で、自分を取り戻していくのが敵対国の大将の許嫁・青華(市川笑也)。笑也さんはりりしくも美しかった!またつらい立場の中なんとか自分の役割を見いだそうとした結果、男のように生きてきたため、自分を歪めちゃってる。氷を溶かすように、それを元ある姿に戻していったのが、王英(市川猿弥)である。
最初に剣を合わせてから、稲妻が走ったみたいにいっぺんで恋してしまった王英、演じる猿弥さんがうまいのなんの。不器用で、無骨な容姿だけど、青華を一途に想う純粋で優しい気持ちは最上級。青華に冷たくされても自分の思いは変わらないと一生懸命に青華に尽くす様子や、青華の気持ちが少し緩んできてからふたりで湖の畔で月をみるシーンなんかはお互いすごく不器用でいとおしくて(中学生だってイマドキあんな純情じゃないだろ、ってくらい)。さいごにふたりの気持ちが通じ合った時には「王英、よかったねー!」と、心からの拍手を力一杯送ってしまった。

実をいうと、本来主軸となるべき林冲のパートよりも、こちらのほうが印象が強かった。わかりやすい、というのもあったかもしれないが、猿弥さんと笑也さんの力量も大いにものをいっていたと思う。
林冲の自己の復活にはいろいろな人が関わって舞台全体の大きなうねりになってはいるのだが、青華のパートのように「中でも大きく関わって心を動かした人物」がはっきりしていたほうが良かったのでは。それがいまひとつ、弱かった。あんなにみんな、よってたかって林冲を思っていたのに、王英ひとりの思いに負けちゃった印象だったのだ。
だから、林冲の心に光が射しこまれ、本来の力を発揮する段になっても(私は)いまひとつ盛り上がれなかった。ほんとは、これが一番の盛り上がりどころなんだろうになあ。
ラストの、梁山泊メンバー揃って「替天行道」の旗を掲げてのシーンは、皆の熱い思いと絆を感じられて良かったので、ちょっと勿体なかった。このラストシーンは、舞台の配置的にも、様式的にも、とても美しくて力強くて、一気にここで高揚感が得られたのだった。


以下、余談。

21世紀歌舞伎組の脚本・演出は、私が高校生のときからファンである横内謙介さんが担当されているのだが、その関連でだろう、扉座の高木トモユキさんが出ていた。
メイクしちゃってたので最初全然わからなかったのだが、「その他大勢」のなかで、立ち居振る舞いも美しく容姿も格好よく目立っていたので、誰かなあ?と思って終演後プログラムを見たらどうも高木さんだったらしい。やるなあ!扉座。なんか嬉しかった。

終演後は、役者さんおひとりがロビーに出て、ファンとツーショット写真を撮ってくれる企画がある。(もちろん有料。でも¥1,000はお安いですよね)この日は右近さん。
舞台の扮装のまま登場し、ツーショットを待つお客さん以外の、ロビーにいたお客さん(含・ワタクシ笑)にも手を振ったりしてくれて大サービス。さすが澤瀉屋さん。
女性ばかりかと思いきや、男性の方もけっこういらした。ファンにとってはこのうえなく嬉しい企画、歌舞伎組ならではの企画だろう。

この日のプログラムが¥1500。先日の亀治郎の会の、あのハードカバーの読みごたえたっぷり写真満載のプログラムが¥1800だったのに比べるとなんだか高い〜!という感覚は拭えないが、横内さんのご挨拶も載ってたし、やっぱり購入。
猿之助さんあっての21世紀歌舞伎組だが、今後は様々な「ホーム」を探して(あるいはつくって)いかなければならないんだろうなあ。プログラムのインタビューを読んで(インタビューの内容とは直結しないけど)そんなことを感じた。

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コメント

>SwingingFjisanさん、猿弥さん、初ラブシーンですか!smileそれにしても報われて本当に良かったです♪

ツーショットは春猿さんだったのですか〜?ということは写真におさまらずとも、生春猿さんをロビーで見たんですね!いいなあー!!
春猿さんのお夜叉、綺麗できっぷがよくってけっこうお茶目で、素敵でしたよね。惚れ惚れしすぎたせいか、ブログ記事の中にうまく入れられませんでした…bearing
美しすぎて、もしロビーにいらしても私もとても近付けなかったと思います。。。

猿弥さんのラブシーンは初めてみたいですよwink 可愛かったですよね~。
笑也さんの歌舞伎は久しぶりなので、嬉しかったですわ。ブログも終わっちゃったし、ちょっと寂しく思っていたところでした。

右近さんとのツーショットなら撮りたかったなあ。私のときは春猿さんで、あの美しさと並んで写真なんてとてもとてもできませんでした。

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