« でかしゃった!伽羅先代萩 | トップページ | 花形歌舞伎昼の部、かんたんに!(^-^) »

2008/11/13

顔見世昼の部

顔見世って、やっぱり、いいなあー。
と思える歌舞伎座十一月の顔見世興行。なんか、季節感があって、よいのだ。
昼の部は、仁左様が、恐かった。そして最上級に格好よかった。震え上がりました。

盟三五大切
初めて観る演目だったが、物語も構成もとてもわかりやすくてすぐに入り込むことができた。
タイトルがなんのこと?と思ったが、字のとおり、三五(菊五郎さん)大切、と入墨してたのね。小万(時蔵さん)は三五にそんなに惚れていたのね。そしてそんな小万に、源五兵衛(仁左衛門さん)はそれほどまでに、惚れていたのね。
後半にいくにつれそれがひしひしと伝わってきて、せつなくなってしまった。

物語の構成は、そんな恋愛模様と、百両というお金が人の手に渡り渡っていく世の中のせちがらさ人の猾さと、武士の社会で生きていくことの当然に生じる不条理さとが絡み合い、そして殺しのシーンはじつに凄惨に長々と表現される。ちりばめられた市井の人びとの庶民的な笑い。
…うまくできているなあ、そんな感覚だった。

失脚したうえ小万にいれあげて家財すべて失ってしまった侍・源五兵衛はなんだか心もとない。なにやってんだよぉ、しっかりおしよぉ、と言いたくなる。それが、騙されて百両を奪われ恨みがつのり、並行して自分の失脚の原因をつくったのが誰かがわかってくる。それにつれ、源五兵衛の顔つきはもちろん、声がどんどん変わっていくのだ。それが、恐ろしい。もちろん、凄みを増して、仁左様はものすごくかっこよくて美しいのだ。
殺しのシーンはもう、恐くて恐くて。ひとつひとつを型としてみせていくその様も、凍り付くようで恐くて綺麗で、よく事故のときとか死ぬときって、まわりがスローモーションで見えるというけれど、それってこういうことなんじゃないかと思う。
そして殺した小万の首を、愛おしそうに大切に、抱きかかえるのがまた…そんなに好きだったのーと涙を誘うが同時にゾッとする。
そして、そういう仁左様がまた、美しいのだ。ひえー。

仁左様があんまりかっこいいから、小万が心底惚れてるのが三五、っていうのがどうも合点がいかないときがあったのだが、菊五郎さんは菊五郎さんでまた、味があって素敵だった。三五も小万を愛しているのだ。それがよくわかる。
時蔵さんは、男っぽい深川芸者を色っぽく演じていて綺麗だった。男に媚びているわけでもなく、かといって一人で生きていくふうでもなく、彼女にとって男が必要だというのがよくわかる。でもしぶとく逞しく生きているのだ。ときおり、ものすごく艶っぽくてドキドキした。

とにかく、主役の三人が素晴らしく良かったので、とても見応えがあったのだが、脇を固める方がよかったのはいうまでもない。
ことに、なにかと源五兵衛の世話をやき、しまいには源五兵衛の身代わりになって縄をかけられてしまう八右衛門(歌昇さん)が泣かせてくれた。源五兵衛のことをいつも心配し、影からささえるけなげな忠誠心と、持ち前のユーモラスな演技でときには笑わせてくれた。

いろいろな意味で、とても心に残る、顔見世の「盟三五大切」だった。

…でもって、最後に失脚の誤解が解けたとはいえ、あんなに凄惨に何人も殺しちゃった源五兵衛がスッと討ち入りに参加しちゃうのって、どうなの?と思ったが、そして最後がそれでスッとまとまっちゃったのもなんだかな?だったが、それが歌舞伎なんだろうか?(笑)


郭文章
もうね、ほんとうにね、いいかげんはっきりしなさいっ!てな感じの男の話ですよ、藤十郎さん。
あんなに時間かけなくても(上演時間のことである)10分でも終わっちゃうような話、なのだが、それぞれのシーンでの藤十郎さんの、間の取り方とか、ちょっとした表情のつくりかたとか、うまいのよ。
なんかやはり、上方の話だなあと思う。ちょっとした風情を、ながながと謡や踊りで表現したり、感情がいったりきたりしてなかなか着地しなかったり、そのあたりの変化を見せる、という。
藤十郎さんを楽しんだ。
そして、最後、おめでたく華やかに終わって、歌舞伎座を気持ち良く出られたのでありました。


以下、余談。

舞台写真は柱二面にいっぱい、出ていた。開場時に売り場見たときには、柱に貼ってなかったような気がするのだけど、幕のうちに貼ったのかなあ。私の見落としかしら。
仁左様も、菊五郎さんも、時様も、たーくさん綺麗なのが出ていました。

今日は三階の二列目で観たのだが、うっかりオペラグラスを持ってくるのを忘れてしまい、誰が誰やらまったくわからなかった。出るなり雰囲気とか声とか、役柄でわかるひともいるのだが、ちょっとしか出なかったり、舞台の上で名前を呼ばれなかったりしたひとは、だいたいわからなかった。。。役者さんを見るもの楽しみなんだから、ちょっとがっかりでした。

その前列に座っていた方のうちの一部がとっても前のめり。私の前の方じゃなかったんだけど、いくつか先の席に座ってた方が、前の方に何度か直接注意なさってた。なのに、直さないの。びっくり。え〜っ、なんで〜?カンケイないわ!って表情してそのまんま、前のめってるんですもの。いろんな人がいますよね。気になってしかたなかった。
でも本日の両隣りのかたはとってもいい方で、穏やかに観劇できました♪

« でかしゃった!伽羅先代萩 | トップページ | 花形歌舞伎昼の部、かんたんに!(^-^) »

コメント

>SwingingFjisan様、コメントありがとうございます。
仁左様芸術品のように美しかったですね。
時様には倒れそうでしたか!happy01私もクラクラいたしました!
今月は一回かぎり、と思っていたのですが、SwingingFjisan様がそうおっしゃるのを聞いたら、やっぱりもう一度観たくなってきてしまいました。それほど「三五…」良かったです。
悩ましいですねえ。。。

こんにちわ。
仁左様がとにかく怖くて素敵でしたね。時様もそのあまりの美しさに私、倒れそうになりました。菊五郎さんのつらい気持ちも胸を打ちました。そして、ああ歌昇さんweep
う~ん、mami様のレポを拝読したら、もう一度行きたくなってきました…

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/106794/25306230

この記事へのトラックバック一覧です: 顔見世昼の部:

« でかしゃった!伽羅先代萩 | トップページ | 花形歌舞伎昼の部、かんたんに!(^-^) »

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

お気に入り☆BOOKS

  • 小川洋子: 「ブラフマンの埋葬」
    ブラフマンという不思議な生き物に関わった私の、ゆるやかな変化の物語。
  • 吉本ばなな: 「デッドエンドの思い出」
    シアワセとフシアワセの境目ってなんだろうかと、そのボーダーラインの不確かさはむしろシアワセな贈り物なんじゃないかと思わせてくれた作品。
  • 駒形克己: 「空が青いと海も青い」
    ぜんぶ広げると1枚の紙になってしまう、不思議な絵本。広げたり畳んだりしてみるとまた、構成が変化しておもしろい。書いてあることは、一言なんだけどけっこう科学的。
  • イワサキユキオ: 「Say Hello! あのこによろしく」
    どのページを開いても、満面の笑顔になっちゃう。笑顔なのに、ウルウルしちゃう。子犬たちの成長が、愛情たっぷりの写真で綴られています。
  • 川上弘美: 「椰子・椰子」
    ありえなさそうなんだけど、ありえちゃうような不思議な日々を淡々と過ごす「私」のへんてこりんなお話。山口マオさんのイラストも可愛い。
  • 西岡常一・小川三夫・塩野米松: 「木のいのち 木のこころ 天・地・人」
    寺社建築に携わる二人の宮大工の棟梁のお話。宮大工という未知の世界の話はとても興味深く、また「真」をみるということは万事共通なんだと感じ入りました。

最近のトラックバック

無料ブログはココログ