« 歌舞伎座建替えに関する記事 | トップページ | 浅草がたり »

2009/01/29

リチャード三世

1月29日 「リチャード三世」@赤坂actシアター(18時30分開演)
200901292209001_2

いのうえひでのり×古田新太 による、なんていうか、ニューウェーブ・シェイクスピア。
前半はリチャードが悪事のかぎりをつくし王位に上りつめるまで、後半はその後の転落。115分、休憩20分、70分で、18時半開演の終演は22時頃。でも長さは全く感じさせなかった。


↓ちょっと長くなっちゃったので、たたみます。
千穐楽まであと少しですが、多少のネタばれあるので、これから見る方はそのつもりで。


舞台は近未来の無機質な感じ。家具などの小道具(?なのかしら)はトラディショナルな雰囲気のものもある。そして、いのうえ演出お得意のTVモニター大小とりまぜて舞台上に11台、舞台脇にそれぞれ1台づつ。これがいろいろな役割を果たして(字幕だったり、人物紹介だったり、ニュース画面になったり)複雑なシェイクスピアの物語展開をわかりやすくしてくれる。
音楽はロック調。ちょっとメタリカっぽい感じ。
衣装はこれまた60年代風のポップなテイスト(パンタロンとかちょっとキッチュなカラーコーディネートとか)に、クラシカルを組み合わせたもの。
舞台のビジュアルなつくりこみだけでも、やはり、いのうえ版シェイクスピアだ。

台詞は…シェイクスピアらしい長台詞の流麗なところもあったが、総じてテンポよくスピーディにたたみかけられるところが多く、かなり現代風にアレンジされている。
ただし、聞かせどころはやはり独特の長台詞。古田新太さん(リチャード三世)、三田和代さん(ヨーク公夫人)、銀粉蝶さん(マーガレット)はさすがの技量で聞きごたえがあり、そのシーンの重みとにじみ出る感情を、十分に堪能した。また、私は初めてみる方だったけど、宝塚出身の舞台女優さん、久世星佳さん(エリザベス)が、ことのほか良かった。台詞も感情がのってよかったし、きっぱりした男勝りな雰囲気と、女性らしい迷いなどがかもしだされて、この方と古田のシーンは、ものすごく引き締まった。この女優さんたちが、ものすごく存在感があって、舞台を盛り上げていた。
安田成美さん(アン)が出ていたけど、美しくて声の通りもよかったが、台詞に感情が全然のっていなくて、お人形みたいだったのが残念。

古田さんのリチャードは、悪くて醜くて狡猾で、ただひとつの目的のために手を汚しなんでもやる、正真正銘の悪人だ。冒頭の独白で、「自分は醜くていい思いを全然して来れなかったから、こうなったら悪事のかぎりをつくして王位についてやる」みたいな宣言をするのだが、最初にこう腹をくくった決意を見せられて、観客のほうも覚悟ができるというか…この先どんな残忍なシーンがあっても、またそのおいたちのせいで歪んでしまったバックボーンが語られようとも、動じない心構えができてしまう。
また、そういった悪事の決意表明や、周囲の者を陥れるストーリーを、ボイスレコーダーみたいなのに語ったり、パソコンで打ったりしている。その内容がモニターに表示されるのだが、ここで現代的な機器を使っていることで、リチャードの心のひだには微塵の温かさもない印象になって、その後の転落にも全く同情の余地をつくらせない。こういう、ともすれば目新しさだけが目につきがちな演出に最大限の効果を持たせることのできる、いのうえさんは、やっぱりすごい。
ただ、そんな男に、なぜアンもエリザベスも、心を許してしまうのか、迷ってしまうのか。そのあたり少々説得力がなかった。逆にそれくらい、古田さんのリチャードは、かわいげがなかった。
このあたりが古田さんのすごいところで、持ち味としては「かわいげ」がある方だと思うが(薮原検校のときは、あった気がする)、役によってそれを消し去ってしまえる。今回のような醜い役もやれば究極の二枚目も100%やってしまう。

いのうえさんと古田さんの、力を総動員して、シェイクスピアに挑んだんじゃないだろうか。
新しい切り口で、賛否あるだろうけど、私はたいへん面白かった。
ただ、シェイクスピアの、あの、まどろっこしくて長々しい、でも流麗な、台詞の楽しさはあんまりなかったかも。とてもスピーディで分かりやすくて現代的な、いのうえ版であった。
「いのうえ歌舞伎」で新ジャンルを確立したように、シェイクスピアでもこれからさらに上演を重ねて「いのうえシェイクスピア」をつくって欲しいと思った。

« 歌舞伎座建替えに関する記事 | トップページ | 浅草がたり »

コメント

>SwingingFjisan様、コメントありがとうございますhappy01レスが遅くなって、たいへん申し訳ありませんでした。
女性心理って…不思議ですよね。押して押して押しまくらると、ぐらっときちゃうんですよねcoldsweats01たとえ相手があんな悪人であっても。
その心理は私もよくわかります。
女性の側よりもむしろ、古田リチャード、かわいげはなかったけど、悪の徹し方の深い表現には至ってなかったのかも。

女心って不思議ですよね。私は人間心理としてそこが一番面白かった(他の心理はだいたい理解できる。しかし女のこの心理は…客観的にわからないではないんですけどね)smile

>doremi様、コメントありがとうございます!
シェイクスピアとして見れば「否」も出てくるでしょうし、いのうえさんがシェイクスピアをやったと見れば「賛」かもしれません。
でも面白かった!それは確かです。
「メタル・マクベス」私も観ました!これはロック・オペラでしたね。(内野さんカッコ良かったですよねhappy02)理屈ぬきに楽しめました。
ただこのときは、タイトルを「メタル・マクベス」とした時点で、すでにシェイクスピアからは少し離れた独自のものになっているんですよね。
今回は正面からぶつかって、いのうえ流にした、という印象でした。
また、シェイクスピアものに挑戦して欲しいし、見てみたいですよね♪

とても興味のあった「リチャード三世」のレポありがとうございます。確かに賛否両論ありそうな舞台ですね。「いのうえシェイクスピア」と言えば、私が唯一観たことのあるいのうえ作品が「メタルマクベス」です。今回とはまた違った手法でしたが、ちゃんとシェイクスピアになっていて私は面白かったです。次回はどんな切り口でシェイクスピアを見せてくれるのか楽しみですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/106794/27591534

この記事へのトラックバック一覧です: リチャード三世:

« 歌舞伎座建替えに関する記事 | トップページ | 浅草がたり »

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

お気に入り☆BOOKS

  • 小川洋子: 「ブラフマンの埋葬」
    ブラフマンという不思議な生き物に関わった私の、ゆるやかな変化の物語。
  • 吉本ばなな: 「デッドエンドの思い出」
    シアワセとフシアワセの境目ってなんだろうかと、そのボーダーラインの不確かさはむしろシアワセな贈り物なんじゃないかと思わせてくれた作品。
  • 駒形克己: 「空が青いと海も青い」
    ぜんぶ広げると1枚の紙になってしまう、不思議な絵本。広げたり畳んだりしてみるとまた、構成が変化しておもしろい。書いてあることは、一言なんだけどけっこう科学的。
  • イワサキユキオ: 「Say Hello! あのこによろしく」
    どのページを開いても、満面の笑顔になっちゃう。笑顔なのに、ウルウルしちゃう。子犬たちの成長が、愛情たっぷりの写真で綴られています。
  • 川上弘美: 「椰子・椰子」
    ありえなさそうなんだけど、ありえちゃうような不思議な日々を淡々と過ごす「私」のへんてこりんなお話。山口マオさんのイラストも可愛い。
  • 西岡常一・小川三夫・塩野米松: 「木のいのち 木のこころ 天・地・人」
    寺社建築に携わる二人の宮大工の棟梁のお話。宮大工という未知の世界の話はとても興味深く、また「真」をみるということは万事共通なんだと感じ入りました。

最近のトラックバック

無料ブログはココログ