3月23日 夜の部 日生劇場
(そめもようちゅうぎのごしゅいん)
久々の歌舞伎は日生で。
原題は「細川の血達磨」、細川家に仕える友右衛門(染五郎さん)が、忠義のもと、家宝ともいえるご朱印を、自らの腹をかききった中に入れて火事から守り通したという美談。
なぜそれほどに忠義を尽くしたかというと、愛する小姓・数馬(愛之助さん)との仲を、当時の世評では赦されないにも拘わらず受け止め、両者ともに召抱えてくれた細川越中守(門之助さん)への恩義があってこそ。
火事シーンの大胆な効果・舞台装置や、BL風味など、いろんな意味で話題になっている作品ですが、総じて歌舞伎色は少々薄味。
筋立てはわかりやすく、観るのに苦労はまったくないけれど、歌舞伎色だけでなく全体に薄味感が…
役者は揃って熱演だし、舞台装置や効果も歌舞伎の枠を超えて、凝ったつくりになっている。
なのに、なんで?
と、ない頭を捻って考えましたが…
結局のところ、土台である台本の消化不足では?と思ったしだいで。
この物語の根幹にある「恩」と「愛」の二本柱が、分裂ぎみなのですよ。
前半の「愛」と、後半の「恩」が、別々のもののように感じられてしまうのです。
これが完全にリンクし、深く絡み合っていたら、ラストシーンは相当感動的だったでしょうに。
勿体ない…。
その台本の上で、役者さんたちは大熱演しているので、本以上の「生」を生きてしまって、どことなくアンバランスな感覚に陥ってしまいました。
原作を知らないので、もしその表現法が原作に乗っ取ったものなら、大変に申し訳ない感想なのですが。
日生で上演することを意識して、歌舞伎以外の手法も多く取り入れており、画期的な取り組みであることは素晴らしいのですが、それぞれのパート同士に不整合が感じられ、私はいまひとつ舞台にのめり込めませんでした。
つながりはともかく、そのパートごとに観れば、
染五郎さんは、ことに後半の火事場などではポテンシャルの高さをいかんなく発揮して大迫力でしたし、
愛之助さんは前半、何をしていても可憐な美しさ、後半は兄弟の契りをかわした友右衛門のバックアップもあってか、少し大人になった意思の強さを感じられ、
おふたりともとても素敵でした。
腰元あざみの春猿さんは、恋する女性の嫉妬心をじつによく出していて実に良かったし
私にとっては思いがけなく憎まれ役だった猿弥さんは、ふてぶてしく
吉弥さんの堂々たるお芝居には安定感安心感がありました。
ラブラブなシーンは、こちらの照れもあってか、つい笑っちゃいましたけどねー
愛之助さんは、可愛かった~
キレイだった~
ついこの間ゾッコン惚れ込んだ、あのニヒルなお坊吉三をやった方とは、とても思えない…役者さんてすごいですよね。
…とまあ、ミーハーな部分ではけっこう楽しませていただいたワタクシ。
なんだかんだいって、楽しんで帰ってまいりましたけれども、う~ん、作品的にはいまひとつ、消化不良な感覚でございました。
この作品が大好きなかたもいらっしゃるでしょう、ごめんなさい。
でも、なんの知識もなくても、考え浅くても、そのときに自分が感じてしまったことなので、
正直に書かせていただきました。
もっともっと深まったこの舞台を、また観てみたいなあ。
と思います。
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