アート

2011/11/30

箱根の秋

11月さいごの日、箱根に日帰りの小旅行。
お目当ては、箱根美術館の苔と紅葉のお庭です。
バスでの旅行でしたので、交通は楽々、時間を気にすることもなく、思うまま気の向くまま、楽しんで参りましたheart04

お天気はどうかと心配していましたが、この日はなんと!雨は降らず、気温は高く、外歩きにはちょうどよい気候。
ただ、紅葉のいちばんいい時期はもう過ぎてしまっていて、標高の高いところはもう茶色っぽい山。
でも少し降りると、まだまだ楽しめるところも多くありました。

箱根美術館は、陶器の美術館です。
縄文時代のものから、江戸時代のものまで、時代をまたがって様々なものを展示しています。
私にとって今回、お庭がメインで、陶器はあんまり、といったところだったのですが、いざ見てみるとかなり見応えがありました。
ことに、縄文のものは大きな甕のようなものが多数展示されており、あんなに大型のものを制作する技術があったのかとびっくり。
今のやり方でいえば、おそらく手びねりに近い技法なのですよね?もうびっくり、です。
伊万里の絵付けはやはり美しいですし、信楽の素朴な焼きむらには味わいがありました。

陶器をみて、ふと視線を移すと、窓の外にはすばらしい箱根の山の借景と、竹と紅葉と苔の美しいお庭。
実に風情がありました。
館の方によると、この庭にある石は、みな箱根にもともとあったもので、どこかよその土地から切り出してきたものではないとのこと。
すべて箱根の自然の恵みからつくられたお庭だということを、とても誇りに思ってらっしゃるようでした。

お庭は広く回遊式で、お茶室や東やが点在し、池には鯉がゆったりと潜んでいたりして、ゆっくりと歩をすすめながら楽しみました。
もう秋も終わりだなあ。
終わりかけだけど、箱根に来れて良かった。

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写真があまりうまく撮れませんでしたcoldsweats02お庭の雰囲気だけ。
もっと腕を磨かなければbearing

2011/11/21

葉山にて

11月16日、葉山の県立美術館に行ってきました。
23日まで、ここで「川合玉堂展」が開催されています。

玉堂については、あまりよく知らなかったのですが、作品をこれだけまとめて見ると、その人となりに少しだけ触れたような気持ちになります。
玉堂は、制作には厳しい方だったのかもしれませんが、作品から漂ってくるのは、身のまわりのものに対する温かいまなざしでした。
近所の農家のひとびと、ご家族や犬や猫や鳥、自分の身をつつむ自然の風景のあらゆる表情。
そんなものを、「筆」一本で表現されていました。

日本画にはいろいろな技法があります。
表現方法はひとそれぞれですが、私は、「筆」で描いたことが感じられる筆致が好きです。
玉堂の時代には、その時代なりの表現があって、今よりは幾分アナログだとは思うのですが、それにしても「筆」の息づかいが感じられる。
絵絹の使用が多いのも(時代のせいでもありますが)温かみを増幅させていたようです。

こういうことは、日本画の作品では私にとっては稀で、
他ではどうかといいますと、まず壮大さとか、すばらしさとか、至高さが伝わってくる。
そのあとに、どのように構図を練ったのかなとか、着彩の技巧とかに目がいく。
ですから、見てすぐに、その人の感情を感じたり、身近なものに対する愛情を感じたりすることは、少なかったのです。
これは不思議な感覚でした。
偉大な画家先生であるはずの玉堂に、親しみやすさを感じてしまったのです。

とてもいい展覧会でした。


そして…。
海辺にあるこの美術館では、夕景がたまらなく、いいのです!
海側に面した美術館のカフェで、夕日を見ながら紅茶をいただきました。
海辺のお庭も散歩して、玉堂の作品を頭の中で思い巡らせ、至福の時間でした。

201111161626003


2009/02/17

色の秘密 ルオー収蔵作品展

2月14日 「色の秘密」ールオー収蔵作品展 @パナソニック汐留ミュージアム

仕事で汐留にいったついでに、駆け足で鑑賞。
パナソニックミュージアムは、駆け足で見られるくらいの広さでちょうど良いかも。

タイトルのとおり、ルオーの作品を「色」という視点からのテーマで展示解説したもの。
年代別に、初期の「光と影」の色濃い、どちらかというと白黒に近い世界から、だんだんと「色」を塗り重ね、「色の下に色をみる」ような作風になる課程を追っていっており、わかりやすい。
油絵だけでなく銅版も多く、その作品も銅版に濃い着彩を施しているのが興味深い。銅版というと、どちらかというと線が主体の硬質な表現方法が印象としてあったが、ルオーのものは肉感的で骨太で体温が感じられる作風なのが、なにか神経を逆なでされるような、下からえぐりとられるような、ちょっと衝撃だった。

油彩のものは、マチエールにこだわったという解説のとおり、何度も何度も塗り重ねられており、構成の複雑さ、塗り重ねられた色の重み厚み深みがある。
おまけに額がこれまたコテコテに塗り重ねられたふうな、彫刻とか彫金を施したもの。
描いているときにはその作品への思い入れ‥愛情執着こだわりが非常に強かったんではないかと思われる。

非常に濃い作品たちであった。
いままでルオーに対して、このように感じたことはなかったから、今回の展示の内容でそう思ったのだろうし、私の感覚も以前と変わってきているのだろう。
暗闇のなかに光をもとめて、必死に塗り重ねているといったような、そんな印象の展示であった。

2009/01/22

Go to DNP

1月14日 ファン・ホーホストラーテン《部屋履き》 @ルーブル-DNPミュージアムラボ

ちょっと前になってしまったけれど、DNPミュージアムに行ったときのことを。
年末に一度予約していながら、体調不良で取り止めた見学だったが、今回再チャレンジ!浅草歌舞伎の帰り足で行ってきた。(浅草→五反田、都営地下鉄で一本trainだし、近いのよ!)

ここの展示は普通の美術展とは全く様相を異にしていて、ある意味「美術展」と思ってはいけない。
展示されている作品は、今回はファン・ホーホストラーテンの《部屋履き》一点のみ。展示内容とコンセプトによっては、本物の作品は一点もないこともある。
その作品について、様々な角度から観察し、見た人がいろいろなヒントを得ながら自分なりに掘り下げていける、あるいは想像できる、といった趣向の、いわば実験室みたいなもの。

あらかじめ予約を入れてあるので、受付でその旨を告げ、解説をしてくれるイヤホンガイドmusicのようなものを借りる。
これは、骨電動で音声を伝えてくれるので、鑑賞しながら、解説を聞きながら、同行の人と感想を語り合ったりもできるし、またその展示の前に行くと自動的に反応して解説を開始してくれる。たいそうなスグレモノだ。

ここの展示についてはいちおう順路が表示されてはいるが、基本的にはどのように回ってもかまわない。いったりきたりを、何度したって良い。
今回まずは展示室で作品を鑑賞し、展示室内にある投票箱(といってもデジタルのもの)に、絵の印象を投票する。あらかじめ印象を語る表現がいくつも用意されている。もちろん、その中に自分の思う表現がなければ言葉を追加することもできる。(これは別に部屋で、みんなの投票結果を見ることができる)
まずそうやって、自分の得た印象を具体的に表現して自分自身ではっきりと自覚したあと、次のブースに行く。

シアターでは、ファン・ホーホストラーテンの生きた17世紀オランダの時代背景を見る。歴史的背景、絵画の流れ、同時代を生きた絵画仲間たち、その活躍ぶり、その中にあってのホーホストラーテンの位置づけなど。
オランダ絵画は、一部の有名人を除いて(レンブラントとか)名前の認知度が日本では低いのではないか。(オランダ人の名前、長くて覚えにくいというのもあるかもcoldsweats01)実際、紹介される画家たちの名前を、知らなかった人も多くいたし、作品を見てあぁこれが!と思ったものも(作品だけは見ているのよね)あった。
また当時のオランダの世相を聞くとさらに作品への理解が深まるというもの。

次にホワイエに行く。ここでは4つの展示。
絵を立体画像にして(ホログラムのようなもの)その中に自分が入っていくというもの、画家のさまざまなプロフィールの紹介、作品に表されるもチーフの持つ意味、作品中の光の存在のしかたの意味を、それぞれのコーナーで体験できる。
作品のなかのモチーフの意味のコーナーでは、たとえば「キャンドル」についての当時の人々の印象、キャンドルといえばこういうものの象徴がある…といったような解説がなされる。
光の存在のしかたでは、作品で表現されている以外に、違う方向から光をあてた場合の変化のさまを画像で実験することができる。
しかも、その画像は、プリントアウトして持ち帰れるのだhappy01

いろいろな実験が自分でできて楽しいこと、一枚の絵についてたくさん掘り下げることができて興味深いこと、またさまざまな視点からその作品にアプローチできることの充実感などがあって、とても面白い展示である。
当時のオランダという国にあっての表現、という視点からさまざまなものの持つ意味を知ることができたのは私にとって大きな収穫だったし、光のあてかたによる表現イメージの変化を体験できたのも興味が深まった。(もともと私、絵画における光と影の表現というものに、非常に興味があるのだ)
ただひとつ、難をいうならば、ずべてのものがデジタル展示なので、電磁波に弱い方、あるいはペースメーカーなど使用されている方には不向きというところか。
そこの問題さえクリアしていれば、じっくり見れるし、なんといっても無料だし、それでこんなに遊ばせていただけて、ものすごく楽しいミュージアムである。

今回の展示は、5月16日まで。
イヤホン?の貸し出しの都合上、要予約だけれど、当日連絡してもキャンセルなどで意外と入れるかも。興味のある方はぜひ。とっても楽しいです!happy01shineshine

2008/11/28

ボストン美術館浮世絵名品展

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11月27日、すべりこみで行って参りました。
会期(11月30日まで)もぎりぎりなら入館もぎりぎり。17時半には閉館してしまうのに、入ったのが16時50分くらいですよ!coldsweats01
でも、そこそこな混み具合でしたので、比較的落ち着いて見ることができました。…館内放送で「あと10分で閉館です」っていわれたときにはさすがにあせりましたがdash

今回の展示は、時代別にされていて、その時々のエポック・メイキング的な主題が提示されていて、とても理解しやすいものでした。初期のものは色数が少なく(ほとんど朱と黄色系の色)顔料の種類も限られていたのだということも分かります。
鈴木春信の頃からとても色彩が豊かになり、見ているだけでも楽しいものになってきますが、時代により新しい顔料が手に入るようになったこととか、流行の色があったのでしょう、色彩感の変遷もみてとれて楽しいものでした。

全体には、いままで見たものよりも「役者絵」「舞台絵」が多く、歌舞伎ファンの私にとっては興味深いものでした。その時代の役者さんのことを詳しくは知らなくても、隈取りや衣装は今と変わらないものも多くあり、また絵師の表現により誇張されていたりリアルに表現されていたりという違いもあったりして、そのときの人々にとって、どこが印象強かったのか、何が受けていたのか、ということも(私の知識程度であっても)おぼろげながらわかります。

また当時の風俗を描いた作品も多く、人気のある遊女というのは、それはそれは憧れの的だったのだなということもよくわかります。

浮世絵自身の作風とはまた異なって、幕府の統制の程度も、よくその画風に現れていました。禁止項目がどんどん多くなっていくんですね。
絵師たちの芸術感覚的なものの変遷と、世間の流行と、政治的な統制とが絡み合って、さまざまなものをその絵のなかに見ることができて、たいへん興味深い展示でした。

そんな中、私が非常に興味を持ったのは「下絵」。他の美術展でも「素描」が展示されることが多々ありますが、そういう類いのものですね。試しに部分的に色をつけてあったり、線を何度も消してあったり、切り張りなどして構図の推敲のあとが見えたり、と面白いものでした。
あとは、記者発表のときに亀治郎さんが「お気に入り」として挙げていた三つの作品は、とっくりと拝見させていただきましたよhappy01この絵のどこがお好きなのかなあ、私はここだなあ、などと勝手に思いながら見るのもなかなか楽しいものでした。お気に入りのひとつ、このたびの展示のポスターにもなっている(上に画像を入れたものです)「暫」も、その際に話題に出ていた、「目の中のうすいブルー」をしかと拝見してきました。
ほかに印象に残ったのは歌川国芳の「鬼若丸の鯉退治」という作品。水面に巨大な鯉がおり、その上に鯉より小さな島があって、そこに鬼若丸がいる、という構図ですが、とてもグラフィック的。構図はもちろんですが、色の付け方、作者名版元の入れ方などもいいバランスで、しかもグラフィックっぽいのにものすごく動きがあるのです。面白いなあと思いました。
この人の作品は、ほかのものも「何故こういう構図にしたんだろう?」と思うものが多く、それが意図的であったので、興味をひかれました。

最後はちょっと駆け足でしたが、解説も丁寧に読むことができたし、とても興味をひかれる展示の仕方で、大変楽しませていただきました。
浮世絵って、やっぱり、見てとても楽しいですね。

記者発表のときの様子はコチラ

2008/09/28

村野藤吾展

9月28日
「村野藤吾ー建築とインテリア」ひとをつくる空間の美学
 @松下電工 汐留ミュージアム

村野藤吾さんは好きな建築家のひとりだ。
私の住まいの近くにある目黒区役所の建物は、旧千代田生命ビル。村野藤吾の作品だ。
ときおり行く日生劇場。それから箱根や新高輪プリンスホテル。
京都ウェスティンホテル、佳水園。
いま私が生活しているなかに、村野さんの作品は溢れていて息づいている。
あらためて展示されている作品たちをみると、その多さと、それが身近にあることに驚かされる。

村野さんのデザインは、線がとても奇麗だ。
それはとても整理されていて、しんとした静謐さに溢れている。
が、それらが動き出すとき、さらに美しい重なり、広がり、光と影、などがあいまじって複雑な表情をみせてくる。
建具が動く時、階段を一段一段登るとき、回廊を歩くとき。その一瞬一瞬で変化していく景色が、それぞれの表情に美しい。
が、あいも変わらずたたずまいは静謐なのだ。

そして、「静謐」なのだけれど、それは私たちを迎え入れる優しさ温かさに満ちている。
けして、そこに入る時に意気込んだりさせないでいてくれる。

村野さんはたくさんの西欧建築やデザインの勉強をされているようだが、その養分を十分に汲み取ってなお、とても日本的なものを生み出している。
そこがまた、感動なのだ。
古くから日本にある空間と空間のあいだの「間」がとてもたいせつにされていることを感じるのだ。
そしてその「間」があることが、村野さんの作品を好きな、理由のいちばん、かもしれない。と思った。

そんな「間」を感じにいくなら…
「村野藤吾」展 は、10月26日まで。
入場料は¥500なのに展示は充実しているので、文化の秋にはとってもお勧め。

2008/09/13

ミレイ展

9月12日。
映画ついでに、会場の近い文化村へミレイを見にいく。
さほどの混雑もなく、鑑賞にはほどよい混み具合だった。

単なる偶然だと思うけど、同じ日に見た映画「赤い風船」「白い馬」の映像世界に似た、色と光の世界だった。私の感受性がそういう方向性だったのかもしれないけれど。
細密に描かれた自然の描写はミレイの得意としたところで、今回の展示の目玉「オフィーリア」の背景などことに有名である。
私が今まで感じていたミレイの作風は、物語性が強いものだと思っていたので、今回の展覧会での解説で、その裏には徹底した写実があることを初めて知った。
写生に写生を重ね、精密なまでに構図を組み立ててから本画製作に入るその手順は、造形的な手法だと思われる日本画のそれと似ている。またその表現もかなり細微にわたってのこだわりが感じられるものだった。

「オフィーリア」はやっぱりすごい力を持った作品で、もしもシェイクスピアのオフィーリアを知らなかったとしてもその情景をこの絵から想像することができるし、またシェイクスピアにうるさい人が見たとしてもこの描き方には納得するのではないだろうかと思う。
尋常でない苦しみと、昇華された清らかさと、女性になりかけた少女の色のゆらぎが、ストレートに心を打ってくる。
この絵の前で思わず泣きそうになって、こんなに後世のひとにいまだに、ものすごい感動を与えるなんて、なんてやつだ、と思ったくらいだ。

それと、心に残ったのが「月、まさにのぼりぬ、されどいまだ夜ならず」という作品。
月はのぼっているが、空の色はまだ暗くはなっていないので、色の差はそんなについていないのだ。だから、近くに寄ると、月は空に埋もれてあまり存在がわからない。でもものすごく圧塗りされているのは、わかる。それが、月なのだと。
ところが引いて見ると、月はくっきりと、同じようなトーンの空に浮かび上がっている。
油彩だからこその表現、といってしまえばそれまでだが、私にはそれがとても興味深かった。
「境界」があいまいな時間。角度によって見えかくれする月。境界の不鮮明さを、私は勝手に感じて面白かったのだ。

ほかには、習作に興味を引かれた。綿密な構図の検討、リアルの検証があったからだ。

ちょっと作為がありすぎたり、華やかすぎたり、と感じるところもあって、「お腹いっぱい」な感覚なところもあったけれど、オフィーリアにはやはり会えて良かった。

ちなみに、次回は「アンドリュー・ワイエス」で、これは好きな作家なので楽しみ。
それから只今開催中の「ベルギーロイヤルコレクション展」(浮世絵)@太田記念美術館 のチラシがあり、これもぜひ見てみたいと思った。
そうこうしているうち、江戸東京博物館での「ボストン美術館展」もそろそろ開幕する。
(今日亀ちゃんは「だれでもピカソ」で浮世絵の解説をしていたしね!)
これは美術展にも忙しい秋になりそう!!(^-^;

2008/08/06

ボストン美術館浮世絵名品展・記者発表

8月5日、江戸東京博物館で行われた「ボストン美術館 浮世絵展」記者発表会 に行ってまいりました。
「記者」でもなんでもない私がこのイベントに参加できたのは、亀治郎さんのおかげです。うふふーheart04
亀治郎さんは浮世絵コレクターとしても有名で造詣も深いので、このたびのイベントのパネルディスカッションにゲストとしてご出演。そのため、私のような一介のファンも、その席に行かせていただけたというわけです。浮世絵大好き、2年前の江戸東京博物館での「ボストン美術館展」にも行っている私にとっては、大好きな亀治郎さんから浮世絵のお話を聞けるなんて、願ってもないことなのでございましたnotes

前半は、江戸東京博物館館長の竹内さんと、美術評論家で葛飾北斎美術館館長の永田さんのご挨拶とお話。
このたびのボストン美術館展は、3回に分けて開催される予定で、一回目の今回(10/7〜11/30)は、浮世絵全体の流れ・歴史を踏襲した内容で、全容を紹介していくというもの。そして、予定としては2回目・3回目でそれぞれテーマを絞って(例えば作家別とか時代別とか)展示していくということでした。
今回のなによりの目玉は、スポルディングコレクション。これはアメリカの収集家であるスポルディング兄弟によるコレクションで、その保存の状態や、兄弟の収集眼の確かさから、質が高く年代的にもバランスが良いそうで、たいへん貴重なものだそうです。その点数は実に、ボストン美術館の浮世絵保存点数(50,000点)の1割以上を占めるとか。
また、この兄弟が、保存状態の維持のために一般公開を禁止したことから、現在ではデジタル化された画像でなら見ることができるそう。その中から数点の「書籍」を貸出してもらうことに成功したのだとか。(これは公開禁止のカテゴリーのものではないらしい)
また今回公開される浮世絵は150点ほどだそうで、年代も多岐にわたり、とても貴重なものだそうです。

さて後半は、お待ちかね、前出のお二人と亀治郎さんによるパネルディスカッションです。亀治郎さんのお話中心にbleahご紹介。

そもそも亀治郎さんと浮世絵の出会いは、中学生くらいのときに海外公演で行ったロンドンの蚤の市で、ひいひいおじいさんが描かれた役者絵に出会ったことだそうです。
それ以来、なんとなく興味を持っていくうちのめりこんで、今では役者絵に絞って、1500点あまりの作品をコレクションするに至ったとか。
選ぶ基準は、価値が高そうとか貴重だとかということではなく、「パッと見て気に入った構図」だそうで、これは歌舞伎の演技の参考になることもあるし、逆に違う点を発見することもあるということ。

そのうちに、このコレクションで、江戸東京博物館で展覧会を開いてください、いや、市川美術館をつくってください、なんて竹内館長と永田さんに言われていました(笑)。でもこれ、本当に実現するといいですよねえ。

また、今回の展覧会の出展作の中でお気に入りはなんですか、と聞かれ、次の三作品を挙げていました。
(1)歌川国政「市川鰕蔵の暫」
これは、今回のボストン美術館展のポスターにもなっているもの。
なぜこれが好きなの?と聞かれ、構図の良さ・大胆さと、実際にはありえない(できない)格好なのに動きがあってリアルであるという二点を指摘。
それを受けて永田さん、「止まっているのに伝わるものがあるのが浮世絵の素晴らしいところです」また竹内館長も「この絵の原画を見ればわかっていただけると思うが、線の描写・色の付け方どれもリアルではない。なのにかもし出されるものはリアル。ことにこの目の中に、水色で表現されているラインがあって、それが出色なんです」と。
ぜひ原画を見て、その「水色」を確認したくなりますね。
(2)喜多川歌磨「青楼仁和嘉 女芸者之部 扇売 団扇売」
3人の芸者が描かれている絵ですが、こちらも構図がお好きだそう。この3人の入り方、ポーズ、どれをとってもこれ以外のものが考えられないくらい隙がない。また、この印刷方法が「雲母刷り」というお金のかかる印刷で、売れている作者のものにしか使われていない手法で、それが貴重とのこと。
「これ以外考えられないくらい隙のない構図」という亀治郎さんの表現にびっくり。確かに、そういう構図・レイアウトというのはありますが、稀にしか存在しないし、それを見分けられる人って滅多にいないと思うので。
(3)葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」
富士山の絵ですが、構図も変わっているし色も赤紫?亀治郎さんいわく「おどろおどろしい色」。で、右下に線が入っているのですが、これは自分なら絶対に入れられないが、そこが凄い、と。
先生方解説によると、この「線」は稲妻で、この一枚の絵には4つの気象が表現されている。つまり、富士山の山頂付近は快晴、中腹には雲、麓は夏の夕立ち。そして山麓の稲妻。だそうです。
こんなことに気付いて絵にできるなんて、北斎って、あらためて凄い。

また、さいごに、浮世絵のような素晴らしい宝を、自分達で価値を見いだせずに海外に流出させてしまったのは非常に残念だけれども、逆に海外でとても大切にされ保存していただいたことを感謝して、自分達の宝をまた、ちがった方向から守っていきたい、とも仰られてました。
ほんとうに、まさにそのとおりです。

今日のこのお話を聞いて、その背景を思い出しながら亀治郎さんのお気に入りを鑑賞したら、この美術展も数倍楽しく見れそうです。
また、館長の竹内さんによると、江戸東京博物館で展示をするからには、普通の美術館とはひと味違って、その作品の時代背景とか、風俗とか、時代性などを、少しづつでも紹介していって、作品鑑賞の深みを増していきたい、ということでした。
なるほどそれは興味深そうです。

ということで、お話の内容はだいぶはしょっていますが、たいへんに興味をひかれた記者発表。
亀治郎さんの「お気に入り」をぜひ見てみたい。浮世絵の変遷にもぜひ触れてみたい。10月からの展覧会にはぜひ足を運びたいと思った次第であります。happy01scissors


2008/06/04

INSIDE OF KABUKI

すでに「歌舞伎美人」で記事にされていますが
今月のコクーン歌舞伎の期間とほぼ並行して、コクーン歌舞伎を題材にした写真展が開催されています。
Bunkamura Galleryにて6/1〜6/26。
写真家・串田明緒さんの作品展。
コクーン歌舞伎にそっとよりそって、そのうちがわを切り取った作品たちということです。

コクーン歌舞伎のうちとそとが、同時に見れるってことね。
「夏祭浪花鑑」の前に、ちょっと時間をとって、ぜひぜひみにいこう。

詳しくはコチラ

2008/03/13

ルノワール+ルノワール

午前中松戸→午後新宿→夕方渋谷、というスケジュールの間に1時間半ほど空きができた。
家に戻れないこともないけど、荷物を持ち換えるくらいの時間しかいられないので、渋谷文化村で「ルノワール+ルノワール」を見ることにする。
これが予想以上に、良かった。

タイトルのとおり、お父さんである画家・ルノワールとその息子の映画監督・ルノワールの作品群を中心とした展示。
私は、不勉強ながら、ルノワールの息子さんがそんなに高名な映画監督だったとは、知らなかった。
映画監督である次男のジャンのみならず、長男ピエールは俳優、三男クロードはココという愛称を持つ陶芸家で、それぞれ妻は女優だったりモデルだったりの、とんでもないアーティスト一家だったのね。

展示はおもに、ジャンの父親への尊敬と思慕の念がその作品に垣間見えるシーンを切り取り、父ルノワールの作品と並べて見せるものだったが、
それは、息子が父親から受けた影響・薫陶・愛情とともに、息子を得たことでの父親の喜びや仕事の充実ぶり、ひいては晩年それぞれの道で大成していく息子からの刺激を受けて父親が彼等と交流をしている情愛の深さをみるところに、ただ作品を見せること以上の感動があった。
単純にいえば、「あぁ親子って、こんななんだなあ。家族って、こうなんだなあ」という感動で、
それはもちろん100年も前に生きていたこの親子の、偉大なアート作品が現在に残っているからこそ得られるものであるけれど、
とかく破滅的な生活ぶりがイメージされるアーティストの多い中、「アートに妥協なく、家族には愛深く」といった風情の彼等の生き方がとても心に沁みた。

ルノワールの多く描いた水辺のシーンは、光と影の演出もそのままにジャンの映画の中にもたくさん出てくるようだし、また楽しそうにダンスを踊る姿は映画の社交ダンスシーンやフレンチ・カンカンなどでも表現されている。
ジャンがどんなに父を大事に思っていたか、父からの多大なる贈り物を自分の中で成長させていったかが感じられる作品たち。

なにもいわなくても、血のつながりは性質を似通わせるし、その生き方思考好みのもの、親の影響なくして子供の成長はないだろう。
そういうふうにして、受け継がれていくものを、確かに見せられたような気がして、とても感慨深かった。
それぞれの作品はもちろん、そんなバックボーンなくしても素晴らしいものなのだけれど、こういう視点でみるとさらに魅力が増してくる。

父ルノワールの作品は夙に見ているけれど、息子ルノワールのは見たことがない(と思う)。
これを機会に、ぜひ、見てみたいと思った。

ちなみに、この展覧会企画と連動して、ジャンの映画を文化村ル・シネマ(4月レイトショー)、国立近代美術館フィルムセンター(4月)で上映するそうである。
ルノワール+ルノワール展は、文化村で5月6日まで。

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お気に入り☆BOOKS

  • 小川洋子: 「ブラフマンの埋葬」
    ブラフマンという不思議な生き物に関わった私の、ゆるやかな変化の物語。
  • 吉本ばなな: 「デッドエンドの思い出」
    シアワセとフシアワセの境目ってなんだろうかと、そのボーダーラインの不確かさはむしろシアワセな贈り物なんじゃないかと思わせてくれた作品。
  • 駒形克己: 「空が青いと海も青い」
    ぜんぶ広げると1枚の紙になってしまう、不思議な絵本。広げたり畳んだりしてみるとまた、構成が変化しておもしろい。書いてあることは、一言なんだけどけっこう科学的。
  • イワサキユキオ: 「Say Hello! あのこによろしく」
    どのページを開いても、満面の笑顔になっちゃう。笑顔なのに、ウルウルしちゃう。子犬たちの成長が、愛情たっぷりの写真で綴られています。
  • 川上弘美: 「椰子・椰子」
    ありえなさそうなんだけど、ありえちゃうような不思議な日々を淡々と過ごす「私」のへんてこりんなお話。山口マオさんのイラストも可愛い。
  • 西岡常一・小川三夫・塩野米松: 「木のいのち 木のこころ 天・地・人」
    寺社建築に携わる二人の宮大工の棟梁のお話。宮大工という未知の世界の話はとても興味深く、また「真」をみるということは万事共通なんだと感じ入りました。

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